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マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディションのNONAMEのレビュー・感想・評価

4.5
本当にありえないクオリティだ。この度モノトーン版化された『怒りのデスロード』を数年ぶりに見る機会を得て とにかくそう感じずにいられなかった。この作品は2015年の作品だが その周辺の作品と比較しても とにかくそう感じずにいられなかった。しかも 当時 ジョージ・ミラー 70歳。そう考えると 本当にあり得ない。これは間違いなく歴史的名作だ。そして新たにモノクロに施された今作 ジョージ・ミラー自身 発言している通り『怒りのデスロード』製作当初からサイレント映画を目指していたと言うが このヴァージョンこそがまさにベストエディションだろう。
映画的に『怒りのデスロード』の色彩の情報量は(ほかの映画と比較して)多大すぎて把握できないほどだがモノクロ化したことにより 炎が美しかったり 武装カーなどよりメタリックに感じることができる。また 感傷的なシーンはよりエモーショナルな印象を与え まさにジョージ・ミラーの理想形のひとつのチャップリンや『真昼の決闘』に(ある種)接近したかのような印象を受けた。
そして 不思議なことに劇中の音響や楽曲も別な印象をうけることができる。まさに文字通り『ブラック&クローム』だ。まあ わかりやすく音楽に例えるならリマスタリングやリミックスではなく リー・ペリーが『SUPER APE』を『RETURN OF THE SUPER APE』に プライマルスクリームが『VANISHING POINT』を『ECHO DEK』にしたかのような感じだ。

まあ 話は脱線するが『マッドマックス』が公開された1979年位からはアメリカンニューシネマから筋肉ムキムキアクション映画時代に突入した季節。つまり 世界の遠さゆえに海外のローカルな文化は今よりずっともずっと輝いていて それをそのままなぞること自体がエンターテイメントとして十二分に成り立つ時代だった。思うに 現在の日本の映画シーンにおける極端なドラマ仕立て化現象も メディアやマスあっての成せる技なのだろう。世界が近くなった今 大半の表現者達は 現実世界のリアリティを形にすることで満足してしまう。だが もし多くの若き表現者達が かつての傑作に刺激されて 現実よりもリアルな夢と理想の表現に向かうのなら 世界は今よりもう少しマシなものになるに違いない。ジョージ・ミラー監督の作品のように。
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