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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのohassyのレビュー・感想・評価

4.0
「リチャード・ジュエル」のポール・ウォルター・ハウザーに注目し始めたのが本作で、バカな連中の中でもとびきりバカな役どころをこれ以上なくバカに演じていて、これは本物そのものだななと感心したものだ。
製作まで務めて自分のキャリアを確立したマーゴット・ロビーはもちろんすごかったけれど、それが若干霞んでしまうくらい個人的には目立っていた。
「ブラック・クランズマン」でも同様な役どころで異彩を放っていてやっぱりすごいなと思っていたところにリチャードとして登場して、そのイメージを逆手に取ったキャラクターにまた唸らされた。

本作の元になっている事件はとてもよく覚えていて、僕も御多分に洩れずトーニャ・ハーディングの印象は全く良いものでは無い。
リレハンメルも確かライブで見ていて、最初のジャンプに失敗してからの再演技への件はさすがに演出が過ぎて笑ってしまったものだ。
そこに至るまでの個人的な生活などは、到底想像できなかった。
あの、演技前にメイクする彼女をもし目の当たりにしていたなら、なかなか笑えるものでも無い。
すごいシーンだったなあ。

トーニャと元旦那、母親、いったい誰が本当のことを言っているのか、何が真実なのかは結局分からないけれど、少なくとも当時感じていた一方的なイメージはもう無い。
本作を通じて、1人の人間として認識できたから。
その後格闘家になったりして、その破天荒さにやっぱり笑っていた記憶があるけれど、それも本作を見れば至極自然な流れというか、むしろがんばった結果なのかと思える。

生涯アイススケートを奪われるくらいなら何年か服役すると主張する彼女を見て、価値観というものは人それぞれであると改めて考えることができた。
弁護士にとっては懲役を免れたことで実績になっただろうし、世の中的にもうまくやったなと感じるだろう。
でも当人にとってみれば、終身刑と何ら変わらない。
アメリカ人女性として初めてトリプルアクセルを成功させ、型破りな演技で新風を巻き起こしたトーニャは、もしかしたら早すぎる天才だったのかもしれない。
今なら絶対カリスマになるだろうな。
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