しんご

羅生門のしんごのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.6
今から70年以上前に公開され、日本初のアカデミー外国映画賞に輝いた黒澤明の初期の作品。

ある殺人事件をめぐって①加害者の盗賊多襄丸、②被害者の妻、③被害者自身(=霊媒師が呼び出した霊)の証言がことごとく食い違う真相の背景にある「人間の見栄」の浅はかさを浮き彫りにするとても人間臭い話。「人は自分にも白状しないことがある」という下人の言葉が一つの真理を突いている。

「メメント」(99)、「ファイト・クラブ」(99)、最近だと「ジョーカー」(19)その他の作品で当たり前のように使用される「信頼できない語り手」方式をこの時代で映画に取り入れた斬新さは本当に凄い。カメラに向かって話しかけるインタビュー形式も今やどこでも見る演出だし、本当に先見の明がある監督だなと。

ただ、ストーリー展開自体は他の黒澤作品に比べると少しもたついてて冗長な部分があった印象。今回の真相も旅法師がそこまで社会に絶望する程かといえば、少し滅入り過ぎな感もあった。

人間の信頼に希望を持たそうとするラストはとても好きだった。
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