Oto

羅生門のOtoのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.0
"Rashomon"が「人々の見解が矛盾する出来事」という意味で世界中で使われる言葉になったくらい凄い映画らしい。
事件に関わる3人の矛盾する証言全パターンを映像化するというアイデアだけでだいぶ面白い(内的多元焦点化と言うらしい)けど、物語に重みを加えてるのは雨宿りしてる3人。この2重構造で人間の恐ろしさとかエゴが凄く伝わる

多襄丸は最低だけどどこか魅力を感じる。三船がかっこいいからなのか、それとも素直に生きている人間味なのか。
真砂は時代考証とかあるにしろもう少しマシな風貌で撮ってほしかったなと初めは思ったけども、どの証言でも強烈な内面の持ち主だったので納得した。すごく耳に残る多襄丸の笑い声を上書きするくらいの衝撃的な笑い声に終盤で驚かされた。
妻を許せなかった被害者も実は罪深い。

3時間でも短く感じた七人の侍とは対照的に、90分でも長く感じるくらいに、間がたっぷりで重たいテーマ。森の中歩くシーンとかさすがに冗長に感じたけど基本的には効果的な間だった。
セリフが聞き取りづらいので字幕つけて欲しかったとは思う、英字幕と照らし合わせながら観てた。

各々が自分が殺したって証言するのはミステリーでは珍しいと思うけど、それぞれに美化したい過去の醜い自分がいた。そういう世の中なので、目撃情報を偽って刀も売ってしまった杣売りも本当に信頼できるのか(赤子を育てるのか、証言が本当なのか)は実際わからないけど、自分も旅法師と同じように「信じたい」と思ったしそこに救いがあった。
多襄丸と真砂の笑い声が印象的だっただけに、赤子が泣きながら生まれてくるのにも何か意味があるように感じてしまう。
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