円柱野郎

羅生門の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

羅生門(1950年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

黒澤明が海外で評価される切っ掛けともなった、代表作。
原作は芥川龍之介の「薮の中」。

侍の死体が発見され、検非違使の前で証言する関係者達の証言が食い違う、ラストまで真実は…なるほど、“薮の中”、か。
そこから見える人間の本質の様なものを描きつつ、一縷の望みを持てるラストにしているところに娯楽作品としての体裁が垣間見えますね。

「皆、嘘ばかりだ」と展開し、「人間はそうではないと信じたい」と嘆く千秋実演じる旅法師。
その上でラストに赤子を奪おうとした杣売(志村喬)へ吐いた台詞が印象的です。
結局他人を一瞬でも疑ってしまった法師の理想と現実。
このやりとりは、それまでの80分間の積み重ねを上手く表現してると思いました。

演技はなんだか舞台劇のような大仰な印象も受けたけど、中世日本を描いたこの世界観には合っているとは思う。
やたらと声を張り上げる多襄丸(三船敏郎)の笑い方は豪快を通り越して猿のようだけど、キャラクターはよく分かるねw
木漏れ日の光が作る影も印象的で、印象的と言えばパンフォーカスを使った肩越しの構図の多用。
回想シーンでの多襄丸、女、侍の3人の対峙シーンではことある毎に使われてるけど、特に最初の対峙シーンでは緊張感と共に実に効果的で思わず唸ってしまった。

決闘のシーンでは「今ならもっとたくさんカットを割って迫力を出すんだろうなあ」と正直思ったけど、この映画自体は当時としてかなりカット数(400以上?、普通の作品の二倍らしい)のある作品なので、それは時代というものなんですかね。
円柱野郎

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