ベビーパウダー山崎

彼女のいた日々のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

彼女のいた日々(2017年製作の映画)
4.0
己の人生にプラスになる人生訓や説教を求めて表現に触れている人を呆れされるような映画で良かった。若くて可愛らしい一人の女性が現れたことによって中年の男女がこれまで生きていた無意味な人生と向き合わざるを得なくなる、重苦しくただただ虚しく、普通の人たちのなにも起こらない日常は淡々と続いていくだけ。そもそも人は変わらない(成長しない)、もうこの年になり劇的なドラマなど必要としていない。静かに平穏にたまたま側にいただけのパートナーと死んでいくしかない(絶望として)。ウディ・アレンの流れはもちろん、ロメール的な欲望の寸止め感、ホイット・スティルマンよりは寂しく、ノア・バームバックほど感情をむき出しにすることもない、ユーモアを抜かして更に退屈にさせたホン・サンス映画の匂いはどことなくある。『ロスト・エンジェルス』も最高だったアダム・ホロヴィッツの芝居はやはり抜群。ラストの街並み、好きなタイプの映画だった。