翼

SING/シング:ネクストステージの翼のレビュー・感想・評価

3.0
ショーだけ観れば面白い。ただ本作の期待値はもっと高く、肩透かしを喰らった。
前作は大志を抱くプロデューサーと呼応する演者の熱い物語で大人をも感動させただけに、本作にも当然ながらそれを期待する。だがその期待は残念ながら裏切られ、子供向けのショームービーだった。子供向け作品に構成やら何やらと指摘するのは野暮と知りつつも、「私の」期待値はもっと高く、それが裏切られてしまった記録として正直に綴っておこうと思う。

プロデューサーである以上、興行の成功を願いもっと大きなハコで大きな予算をかけて大興行を起こすことは悲願である。それはわかる。ただ前作である種の成功を収めた彼らにとって、更に大舞台<ネクストステージ>を目指す動機があまりに端折られている。地区大会で良い成績を残したら次は全国大会目指すでしょ、と言えばそれまでだが、そもそも演者たちはビッグになることを志してたんだっけ??音楽に理解のない親との確執や、自己表現に自信のない彼ら彼女らが、偽らざる自己を解放する場所がステージの上で、その眩さが周囲の理解と肯定・賞賛に繋がったことに価値があるというのが『SING』の心震えるツボだったはず。
本作はどこか演者の感情にはフォーカスせず、プロデューサーが大見栄切った興行を成功させる為にどうにかこうにかやりくりして舞台を成功させることに終始している。Show must go onの精神はミュージカル作品の美徳の一つだが、本作のムーンは真摯さというより「どうにかなるなる」なノリで実際なんとかなっちゃうので、移入出来なかった。主人公補正で自分は死なないと分かってる主役みたいな緊張感の無さ。好きになれるはずもない。製作陣も3DCG技術にボノとホールジーをキャスティングして満足しちゃったんじゃないの?って感想。結局は好みの問題だけど、私は音楽と向き合う人々のドラマを期待していたってだけの話。
翼