背骨

彼女がその名を知らない鳥たちの背骨のレビュー・感想・評価

3.9
この映画の予告で共感度ゼロ、不快度100%をうたっているけど、ちょっとそれは言い過ぎな感じ。たしかに感じが良くない登場人物を揃えているけど、あの程度の人物像なら他の映画でもありえるレベルだし、なによりその先の展開に必要な人物設定だから。

これから観る方は、あまりそういう事にとらわれずに観ることをお勧めします。その方がこの映画の良さであるミステリー要素を楽しめると思う。

ストーリーと登場人物の概要はあらすじに書いてある通り。そしてそこからがこの映画の見所で、徐々にミステリー要素が強まって、ストーリーが展開していきます。

原作未読のため、原作との比較は出来ないけど、ミステリーとしてのストーリーはかなりしっかり作られていて、丁寧に張った伏線がキレイに回収されていて、最後にどんでん返しと感動を用意してくれている。

まさに「傑作ミステリー小説をメジャーで上手く映画化した成功例」のような映画。

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この映画の中で描かれる「無償の愛」それは尋常じゃないレベルのもの。それを見た時、純粋で素直な人なら間違いなく感動出来るものだと思う。

残念ながら自分はそこまで心酔出来ませんでしたけど。ちょっと現実離れしてるように感じたし、下衆な自分とはレベルが違い過ぎて共感するまでには至らなかった。

なんか『湯を沸かすほどの熱い愛』のおかあちゃんを見たときの印象と似てる。

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キャストでは特に主演の2人が凄かった。
蒼井優ちゃんは上手すぎてもうなんも言うことありません。彼女のほんの少しの動きで十和子が今なにを考えているのか?なにをしたいのか?がわかってしまう。さすが日本のトップレベルの女優。

阿部サダヲは今まで、いつ見ても、どんな役でも阿部サダヲなんで個人的にはあまり評価してなかったんだけど、今回は陣治にしか見えなかったし、見終わった今となっては阿部サダヲ以外の陣治は想像出来ない。それほど良かった。

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演出・撮影・編集に関しても、さすが白石和彌監督だなぁ、と感心させられたし、美術も良かった。十和子と陣治の部屋。あの絶妙な散らかり具合。ほかの登場人物それぞれの部屋もその人の人物像がまんま表現されているようでリアルだった。

つまりこの映画、テクニカルな面ではなにひとつ文句のつけどころがありません。
映画を構成するあらゆる要素がハイクオリティーで総合的な完成度も高い。

あと、どのくらい観る人に感動を与えてくれるかは、ある重要な登場人物にどれだけ共感出来るか?だと思う。
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