Ren

インビジブル・ゲスト 悪魔の証明のRenのレビュー・感想・評価

3.0
オリオル・パウロ監督作は『ロスト・ボディ』も『嵐の中で』も観ているが、今作が一番好きだった。純粋にサスペンスとして及第点の面白さだと思う。

というよりも、『ロスト・ボディ』はあまりに強引なツイストのせいで絶賛できず、『嵐の中で』に至ってはなんか良く分からなかったという有り様(自分がその程度のオツム)だった記憶があるため、それらと比べたらフツーに観られたのが本作。

ある密室殺人を軸に、質問と会話から真相を紐解いていく106分。「信頼できない語り手」ものとして全部を嘘だと疑ってかかる観客のことを思ってか、登場人物の言っていることがコロコロ変わる。10分毎にストーリーに変化があるのが、観客を飽きさせない親切設計。

ただ「ミステリーの感想でこれを言う奴は信用しない第1位の台詞」を言ってしまうと....これ、オチ読めません?
多分そういうことなんだろうな〜って思ってたことがそのままオチだった肩透かし感。それまで無理のない話運びで進んでいたので期待していただけに、そのオチ、そんなにドヤれる叙述トリックじゃないよと思ってしまった自分がいた。

映画の全体構造の既視感がすごく、○○みたいだね、と多くの人と分かち合えてしまう脚本。
ミステリ・サスペンスが完全に新規のトリックを生み出すのは困難で、全てが過去作のアップデートやオマージュの上に成り立っていることは理解している。例えば近年の『ナイブズ・アウト ~』は、アガサ・クリスティ作品や『犬神家の一族』へのリスペクトを感じる現代の本格ミステリ。一方で今作のような、10〜20年前の映画をそのまま借用したサスペンスは、やはりオマージュというよりパクりに感じてしまう。

自分の中で『ピエロがお前を嘲笑う』を観たときと同じモヤモヤが残る結果に。面白いけど全力では褒められないもどかしさが今作にはあった。
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