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火花のan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

火花(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

導火線に火が点けば、飛び上がっていく。
勢いよく、火花の尾を引いて… 空へと。

ヒュルル…と、不安そうな、か細い音。
ドーン!と空気を震わせて、夜空に大輪の花を咲かせる。だから人は、それに惹き付けられるんでしょう。

弾けて、花を咲かせなければ、花火はただの火薬玉ってことになるのかな?燃え上がれず、燻ったまま落ちて…地面に叩き付けられて砕け散るのかもしれない。

花火を見上げて、どこか切なくなるのは…その在り方にどこか「生きる」が透けて見えるからなのかもしれない。

お笑い芸人の生き様にも、それは見えてくる。
他人に自分を伝える事の難しさを痛感する。

それでも諦められない…その姿。
なんて愛おしいんだろう。

寂しい…誰かに深く理解して欲しい。
何度も傷付き、恐れたりもして…それでも飽き足りず、他人を求めるのに似てる。

でも、これは解ってる…
どんなに親しい人でも、完全にシンクロする事なんてできやしないってこと。

刹那、舞台の上で繰り広げられる漫才。
同じものを見て、同じように笑ったりする。

花火を見て、同じように綺麗だと思うみたいに。

不可能が可能に近付いた…
その瞬間の尊さ。

ライブの熱狂の中でも感じるもの。

作品を観終わって、少し引いたところに心を置いてからジワリと…温い。

たぶん私には、もう少し時間が要る。
その温さに安心するには、まだ早そうかな。

草臥れたな…って。
一人で座り込んだ時。
味気ないツマミでお酒を飲む時。

この作品が、そのひと休みを、ほんの少しマシにしてくれるんじゃないかな…

寂しいようで、悲しいようで…
少しでも笑えれば無くなりそうな…

お前ら全員不幸になって死ね!

くっそエモいわー…
(。-_-。)

疾走感だけがエモさじゃない。
こういう揺らぎも…エモい。

挽歌も、やっぱ必要なんだねぇ。
軽く描かれた後日談も好印象。

言いようのない気持ちを紛らわせて…
まだ続く明日に、よっこいしょ!って腰を上げられる。そんな風情…嫌いじゃない。
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