わたがし

マザー!のわたがしのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
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 序盤はすごい容赦ないブラックコメディだなって思いながら観てたけど、中盤から終盤にかけてのえげつなさというか、あの手この手で精神を擦り取ってくる展開の連続にマジで吐きそうになる。でも、観る視点を変えると「なんてバカバカしい話なんだ」っていうコメディ性も維持しつつ……という感じなので、もう泣けばいいのか怒ればいいのか笑えばいいのか、感情の持って行き方がわからない。今年1番感情を揺さぶられたかもしれない。
 結局、男という生き物は自分で子供を産むわけではないので自分の子を作ったとしても「本当に子孫をこの世に残せたのだろうか」という疑念が多少なりともあるんだと思う。だから妊娠した女をほっといて男は仕事をして「宗教」という子孫をこの世に残そうとし、そうすることで愛する信者をたくさん作る。作られた信者は本当の子孫である子供を……
 そういう男に対して、この子は私の腹から出てきた私の子!!という100%の確信がある女。100%の確信と愛があるのになぜ私のことを100%愛してくれないのという疑念。これだけ相手に尽くしてきたのに、相手は本当に何も考えてねえクソバカで、そのせいで自分の子供まで失ってしまうかもしれないと考えた瞬間のあの、どうしようもない、逃げ場ゼロの究極の絶望感。吐きそうになるなあ
 手持ちのカメラが延々クルクル回る閉塞感、不安感に常に煽られ、過剰な細かい生活音ノイズが耳に突き刺さり、何となくのっぺりした画面の色調と薄化粧で気味悪いジェニファー・ローレンスの顔面。この悪夢としか言いようのない寓話を演出するための材料が全て完璧に揃っている。そして、こういう題材のこの規模の映画なのにVFXも物凄くて、ていうかよくこんな企画通ったよなあ
 ジェニファー・ローレンスはパッセンジャーといいこれといい男の理不尽な欲望に殴られすぎだけど、それを知った上で抗うために表現して芝居をしているのがすごくわかるので好き。やっぱり女は強いんすよ
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