広島カップ

Ryuichi Sakamoto: CODAの広島カップのレビュー・感想・評価

Ryuichi Sakamoto: CODA(2017年製作の映画)
4.0
私の学生時代、今で言うなら検索ワードランキングを大いに賑わせていたであろう頃のYMOを初めて聴いた時には、思っていたよりも人間臭い音で拍子抜けした記憶がある。
コンピュータミュージックなのでもっとキラキラして無機質でメタリックな物を勝手に想像していたのだ。

本作を観て解ったのが、坂本龍一は音を聴くミュージシャンであるということでした。
奏でるより前に良く聴くし、奏でている間も本当に良く聴いているシーンが多かった。
ピアノを弾いている姿勢が鍵盤に覆い被さっているように感じるのも、自然と音源に耳を近づけている結果なのかもしれません。
あんな姿勢ではリトル・リチャードのように陽気に速弾きなんか当然できないし、そこまで良く聴いていると演奏の方が疎かになってしまい眠ってしまいやしないか?と心配にもなってしまう。実際、聴衆(私のこと)は"エナジー・フロー"など真剣に聴いていると眠くなってしまう。

良く聴いた結果、彼のピアノから紡がれる音は人の温かさや自然の手触りを持つ繊細な音でした。"戦場のメリークリスマス"なんてその最たるものではないでしょうか。テクノポップと呼ばれていた頃の彼の音を初めて聴いた時の直感は正しかった。

自らのガンと戦い環境問題に声をあげた音楽家坂本龍一さん。素晴らしい音楽をありがとう。遅ればせながらご冥福をお祈りします。
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