KANA

Ryuichi Sakamoto: CODAのKANAのレビュー・感想・評価

Ryuichi Sakamoto: CODA(2017年製作の映画)
4.0

YMO
映画音楽
社会・環境問題
"音"探索
闘病生活

と、教授のエッセンスがぎゅっと詰まったドキュメンタリー。

津波に呑まれて水没したピアノを弾く、荘厳な冒頭からとても引き込まれた。
野暮なナレーションなどは一切なく、感覚が研ぎ澄まされる感じ。

『戦場のメリークリスマス』『ラストエンペラー』『シェルタリング・スカイ』『レヴェナント〜』の舞台裏映像や裏話はどれも興味深かった。

ベルトルッチにイントロ作り直してと言われてムリです!と言っても「モリコーネはやってくれたよ」と言われて俄然燃える教授、かわいい。

感銘を受けてやまなかったというタルコフスキーの『惑星ソラリス』に使われたバッハのコラール、そして計算され尽くしたかのような自然音の効果。
未見なのでこれは絶対に観なければと思わされた。

私が意識した時にはすでに「世界のサカモト」になっていて、バラエティ番組でおふざけもしちゃう"教授"だった。
それでもYMOのテクノサウンドはどこか懐かしいような高揚感を与えてくれる。
エレクトーンか、もしくはファミコンの影響かなぁ?笑
LAでのコンサート、"ゆっくりボイス"風の紹介が今見てもイケてる!

『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』なんかでは流石、とてもロジカルな音楽論を垣間見せてくれる一方で、
人間の音の原点を求めてケニアに飛んだり、
さらに北極圏へ行って地球環境がもっとマシだったころに降り積もった雪の雪解け水の流れる音に聴き入ったり、
はたまた本作のポスターのようにバケツを被って雨音を聴いてみたり(この絵面すき)、、
やはり感性の塊だなと思わされる。

9.11、3.11を経ての活動を見ると、アーティスト気質に加えて一本筋が通ったオトナという印象。
YMOの頃のインタビューで日本の将来への懸念は見せていたけれど、もはやその愛の対象は地球規模に。

陸前高田市の元避難所で奏でられた戦メリ….あぁ、改めて胸が熱くなった。

自宅にて、奇抜な若き教授を描いたウォーホルの特大アート、
そして同じフレームに収まる綺麗なシルバーヘアにジャックデュランの眼鏡をかけた闘病中の彼。
もちろん病の落とす陰や時の経過は感じるけれど、どちらもお洒落で色気たっぷりな存在感は変わらない。
きっと、天国でも…。
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