るる

移動都市/モータル・エンジンのるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

うーんんん、ごめん、原作を読みたいかな。既視感を拾うのは楽しかったけど、見方のコードをつかめなくて、だいぶしんどかった。

街の様子、人種の多様性という意味では『アリータ』よりこっちが好き、と思ったけど、ロストテクノロジーとハイテクノロジーとクラシカルなスチームパンクが混在する無茶苦茶な映像、ただただ疲れたし、食べ物他、都市の外の暮らしぶりにウッと辟易してしまう場面が多すぎて、魅力的な世界観を提示できてなかった、致命的…

古代の神々としてミニオンが出てきたり、失われた古代文明としてスマホが出てきたり、クスッとはできたけど、話が進むうちに、そんな遊びをやってる場合だったか?と。
CDやカセットテープならともかく、スマホをロストテクノロジーとして扱うの、まだちょっと早い気もしたよね、まだガラケー使ってる人もいるんだぞ…という、極東の島国、ギリギリ昭和生まれだからそう感じるのであって、デジタルネイティブ世代なら素直に面白がって笑えるのかもしれないけれど。

最後の最後で、なるほどな、白人が有色人種たちの国、異教徒に助けを求めてる、あの"復活者"の成れの果てといい、キリスト教の限界を認めたという意味で、アメリカ映画としては画期的だな、既存の価値観を打ち破ってみせるSF小説らしさをそのまま、ようやくそういうことができるようになったのか、と感心したりしたけど。

予告編、YouTubeに上がってた冒頭9分に大して惹かれず、全部見れなかった時点で嫌な予感はしてたんだけど、冒頭から、キャラクター配置がよくわからなくて…へスターがどっちの都市に逃げ込んだかわからなくなる瞬間があって、えっ?と。いや普通に考えて、追われる側、小都市側だろうけど、んっ? 誰と誰と誰がメイン登場人物だ?みたいな。

編集が悪いし、台詞が下手くそじゃない?と思っちゃって、うーんんん

操縦士のおじさんのビジュアルなど、見目の良い無機質な人間ばかりがでてきた『アリータ』と比べて、人間くささに美を見出す人間観が垣間見えるキャスティング、さすがおじさん映画LOTRを撮ったピーター・ジャクソンの製作、とは思ったけど、白人だらけのファンタジーしか作れないひとだという疑惑があるぞ、大丈夫なのかよ、という警戒心はずっとあった。

母の仇だ、と権力者に刃を突き立てる女の子、もののけ姫だ、と思ってかなりテンション上がったんだけど。

へスターとトムを突き落とした父、あのタイミングで背後から娘の声が聞こえて、何故ああも堂々としていられたのか? 突き落としたところを見られたかもしれないのに、というギリギリの状況に見えてしまった、映像の辻褄があってなかった、つらい。

へスターが意識のないトムから装備と金を奪う様子を見せた上で、「金ならないぞ」「ある」というやりとりをやらせるあたり、うまくないなって。トムが目覚めたところから始めてあのセリフのやりとりならともかく、映像で見せたことを台詞でも説明するつくり、下手くそだなって…

ファンタジー映画はやっぱり、監督が脚本を兼ねないと、映像をどのように具現化するか、イメージしにくいんだろうなと思うね…チグハグさがつらかった。

シーンごとの視点が定まらなかったのが最大の欠点かな…終盤でようやく、そうかこれは、へスター、トム、キャサリンが権力を持った大人を討つ、ジュブナイル小説の体裁か、と合点がいったんだけども…子役を信頼して子供たちを主人公として描けないならジュブナイル映画なんかハナからつくるなと思ってしまうんだよな。もやもや。

しかし、アナ・ファンの登場シーンには笑ってしまった、なんだあのサングラスー!? 白人だらけの中に突然現れた中国系の女、最近のハリウッド映画っぽい、やらしいな、とささくれだつ気持ちが湧いたんだけど、
めちゃくちゃカッコよくてビックリ、なんだあのソフトモヒカンー!? とは思ったけど、めちゃくちゃカッコいいお顔立ち、好き…
ジナさん、もっと良い映画で、全く同じ役どころで出てくれ…!と思ってしまった、かっこいい女ヒーローだった…
読んだことないけど、女海賊『スカーレット・ウィザード』を連想したりした。あの飛行機…既視感。

亡くなった母の、友達の女、という役どころもいいなって。頼もしすぎる…

機械に育てられた女の子、いいね。山犬に育てられたもののけ姫と、シータを待ち続けるラピュタの兵を連想。ファンタジーにつきものの、ケモノ、妖怪、得体の知れないバケモノが、機械として登場するあたりSFらしくて楽しい。復活者、ということで、キリストの成れの果てという見方もできてよかった。別れのくだり、もったいつけるな、知らねえよと思っちゃったけど。

もう、話はずっと、わやくちゃで。キャサリンに「ごめん、見えなかったの」と言われて「俺が最下層出身の人間だからですか」ってめちゃくちゃ良い返しをしてた男の子が、キャサリンに付き添って内部から謎を探るかたちで面白かったのに、フェードアウトしちゃったのには唖然。ダメだろ。

パパ大好きな女の子、特権階級にいる白人の女の子が父に立ち向かう姿を描いたのはステレオタイプを覆す意味でいいんだけど、中途半端すぎて残念、
あの展開なら、なんとかしてキャサリンとへスターが友達になる描写をきっちり描かなきゃダメだろって。もやもや。
最後の最後、父を殺したのは実の娘、それはいいんだけど、うっかり轢いちゃった、みたいな結末はどうなの? スッキリしない。

なんかもう…言葉がない。なんでもっと上手くやれなかったのか、つらい。USAと書かれたUSBに笑ってたら、兵器の名前になったり、面白かったけど…「ロンドンが西へ向かっています」とか、セリフは面白かったけど…あ、オーマイゴッドがギリシャ神話?の神の名だったのも面白かったよ。(キルケーって言ってた? 女神、魔女じゃん! いいね!)

へスターのコートが邪魔そう、と思っちゃったのも辛かった、
復活者との戦闘シーン、エキゾチックな装いで武器を手にした人々が不甲斐なくやられていく様子も残念、あんな狭い室内で、戦士ともあろうものが長モノ、槍で戦おうとしないって普通…こだわりや憧れを感じない戦闘シーンだった、
この類のファンタジーで、異国情緒を含むビジュアルに興奮できないのはきつい、『アリータ』の良さが際立った印象。

最後、東洋に夢を見過ぎ、という感想を見かけたけど、そういう文脈ではないような…迎えてくれるのは中国じゃなくてチベットなんだな、そこはズラすんだな、と苦笑したけど、そこまで悪い気はしなかった。インド系の女性の存在のおかげで、多神教国家という感じがしたのは良かった。

しかし、いやーダメだった。ごめん。ダメだった。つらい。

2019.3.9.
冒頭、字幕・林完治というテロップに安心感を得られた。へスターの台詞、キャサリンの台詞、アナの台詞、画一化された女言葉ではない、使い分けがされていて、信頼できる…!と思ったからこそ、ストーリーのめちゃくちゃさ、人に薦めにくくて悔しかったことも書いておきますね…
るる

るる