ぬ

誰がための日々のぬのレビュー・感想・評価

誰がための日々(2016年製作の映画)
4.0
介護疲れから事件を起こし精神的に病んでしまった男性の話。
実際の事件がきっかけとなり作られた映画だけあって、かなり重い。
介護問題や、親子の問題、シングルマザーの問題、学歴社会の問題、貧困問題、労働問題、精神疾患者への偏見や差別の問題、などいろいろな社会的な問題が詰め込まれている。

あとみんな演技がうますぎる、主人公トンと父親、まるで実在しているかのよう。
母親の役の方も嫌になるほどなんかリアルだし、近所のちいさな男の子もとてもいい。
つらいシーンが結構あって、身につまされて泣いた。
パニクって店内の食べ物勝手に食べまくってしまうシーンとか、その場に居合わせたらカメラ向けてる奴らに「何がおもしろいんじゃい!!」ってキレると思う。

それにしても香港映画に出てくる狭いアパート、まじであまりに狭すぎる。(完全にトバッチリなこと言うけど、欧米の番組でたまに出てくる「タイニーハウス」とかナメんなやと思うよね…なーにがタイニーだよ…)

中国は子が親を介護しなければいけない、親を介護施設に入れるのは親を見捨てること、みたいなプレッシャーがまだまだ強いのだろうか?
個人的に、介護する側もされる側も、お互いに、他人同士だからこそ割り切った関係として上手くいく側面も大きいと思っている。(そして、親子間ではなくプロに介護を任せるのは、病気のとき医者にかかったり、学校に通うのと同じようなことだと思う。)
かといって、介護もお金がかかるもんね…
なにはともあれ、金なんだよ…現実問題
でも施設だとお金かかると思って、自分で親の介護しようと思ったら、今度は仕事の方に問題が出てきて、時短にしたいのにさせてもらえないとか、解雇されるとか、そういう問題もあって。
嫌な世の中だよ、と思う。
ほんと、誰がための日々なんだよ…原題は『一念無名』=光のない暗闇、英語題は『Mad World』=狂った世界。
邦題もだが、どのタイトルもしっくりくる、いい題だと思う。
光のない暗闇のような狂った世界だけど、この映画自体、というか監督の親子への視線は間違いなくあたたかい。
狂った世界で狂ってしまうのは、おかしなことではないし、そんな人々がなんとか生存していることは、狂った世界への反抗なんだよ。
ぬ