えむえすぷらす

ファースト・マンのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
5.0
アポロ11号船長で人類で最初に月面に足跡を記したニール・アームストロングを「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴスリング主演で描く。

ものすごくパーソナルなつくりをしている。クローズアップを多用して画角を狭く取り観客が見たいものは見せない(但しその弊害として劇中ニールがフラフラになったように観客もカメラ酔いしやすい映像にもなっている)。
ニールの視線に近い位置で見せるし、時に本人視点、主観も入ってくる。脚色は控えめでX-15から始まりアポロ11号へと話は進んでいく。

劇中、時折テクニカルタームが混じってますが、RCSの説明抜きとかわからなくても通せると見たら説明しないあたりは大胆ながらいい判断(RCS=大気圏再突入用の推進システム。スピンを止めるためニールが作動させている)。

アポロ11号イーグルで一緒に月面へ降りたオルドリンは自分が先に月面に降りるものと思っていた時期もあって厄介な性格で冷静だが言葉で伝えないニールとは対称的な性格。オルドリンの描写をどうするのかなと思っていたら本作は基本ニールの視点重視なので地上でオルドリンが言うべきでない事を言った時に咎めるシーンが2回入ってその性格を念押し描写した後、アポロに乗ってからはオルドリンはニールを立てて任務を遂行するプロフェッショナルを描き出していた。これはニールが別に深く気にしていた訳ではないという意味も持たせていて上手い。
なお劇中出てくる第2グループ、第3グループは宇宙飛行士選抜の期を示していてアポロ1号クルーのガス・グリソムは1期、エリオット・シー、ホワイト、アームストロングが2期、オルドリンは3期だった。

ニールの長女カレンは劇中で描かれたように幼い時に病気で亡くなっている。本作はその事を最後につないで彼と妻の二人のパーソナルな物語としてまとめて見せている。

個人的にはジェミニ8号、アポロ1号の描写の緻密さは興味深かった。ただジェミニ8号がスピンに入った問題で360回転の単位ってなんだろう?というのが謎。Wikipediaだと毎秒1回転程度だったと書いてるんですがこちらが間違いなのかは気になっているところです。
→度/秒でした。台詞にもありましたが最大で毎秒1回転=360度/秒だったとの事。ジェミニ宇宙船の計器配置図を公開しているサイトを見ると姿勢左右席前にそれぞれあった表示計器に最大20度/秒まで示すインジケーターはありましたが映画のような計器はなかったようなのでここは脚色も入ってます(回転描写も誇張されているように見える)。

NASA宇宙飛行士1期(マーキュリー計画から参加)
・ガス・グリソム(アポロ1号)
・ディーク・スレイトン(健康上の理由でこの時期は教育責任者だった)
2期
・ニール・アームストロング(ジェミニ8号、アポロ11号)
・エリオット・シー
・エドワード・ホワイト(アポロ1号)
3期
・バズ・オルドリン(アポロ11号)
・デイヴィッド・スコット(ジェミニ8号)
・マイケル・コリンズ(アポロ11号)
・ロジャー・チャフィー(アポロ1号)
括弧内は劇中に出てきた搭乗宇宙船。