バス行っちゃった

ファースト・マンのバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・マン(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

はじめの試験飛行機越しの宇宙を見ながら、そういえばケルト神話かなにかの本に速く遠くへと人を連れ去る乗り物は死の象徴であるとかなんとかいう話があったなあなんてことをぼんやり思い出す。

その後も大切な人たちの死でもって時間の経過を描写するといったことで宇宙ではなく地上の方を死のイメージで満たし、訓練や船内映像のみで描写される挑戦的な打ち上げシーンといったものを通して宇宙をめざすことで地上という死の象徴から遠ざかろうとする主人公の憑き物が浮かび上がってくるような感じがあって、キャラメルポップコーンを買い損ねたことなんてもうどうでもよくなってしまった。

中盤以降、時間経過の表現が子供の成長による情緒の発達に切り替わることで再生の兆しのようなものが見えはじめるも、主人公の表現はかえって乏しくなっていって、変わっていく世界についていけないというか、いまさらなかったとにはできないという閉塞感というか、そんなものが行き場を見失わせているのかなとか妄想しはじめ、なにがわかるというのかと思いつつもわかるよわかるよぺろぺろと。

成長を続け未来を体現するような息子といちおうの握手を交わし、たとえば宇宙へ向かうロケットを外から映すといった表現でもって憑き物といくらかの距離を取れるようになったような感じのする主人公が、それでもまだどこか行き場のない感じを漂わせたまま月へ降り立つと、月という環境だからこそ見えた、幼さを感じさせる宇宙服姿の影がそこにはあって、ああこの影の中に娘さんや死んだ仲間たちから受け取ったなにかも宿っているのだろうなと勝手に妄想してしまい、形見を投げ入れる段になってキャラメルポップコーンを買い忘れたことよりもハンカチを洗濯したまま忘れてきたことの方を激しく後悔する羽目に。

まあよくよく考えてみれば形見を持ち込んでいた時点で自分の妄想はまさしく妄想でしかなかったのだけれども、それでもいろいろな試みを随所に見ることができたりしたので、全然全然。


評判のmx4dでも見たのだけれども、動きこそ抑揚が効いていてとてもよかったものの、フラッシュやスモークの演出が入るとそこで現実に引き戻されたりしたので、そこだけちょっとって感じ。