塩辛亭ショッパイ

勝手にふるえてろの塩辛亭ショッパイのネタバレレビュー・内容・結末

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

主人公は24歳処女の地味でさえないヨシカ。同僚の「二」から受けた人生で初めての告白に浮かれるなか、中学から絶賛片想い中の同級生「イチ」と10年ぶりの再会! 物語は奇妙な三角関係へと発展し……!?

といった、手垢にまみれた筋書きに至る前に、ヨシカの妄想がぶった切られるのが衝撃かつ面白い。

名前すら覚えてくれていなかったイチの真性天然王子っぷりに彼女がとった行動は、胸に手をあてて「あ〝〜」とうめきながら始発帰宅するのみ。自分も辛い体験をしたとき、同じように胸に手をあてながら「あ〝〜」したことがあっただけに、モロに感情移入モードON! 奇跡のフルシンクロに完全心持っていかれた。

そこからは、「はいはい、チープなラブコメ少女マンガが原作ですか?」と鼻クソほじりながら眺めていた前半とはうってかわって、「ヨシカには俺しかいない!!俺が幸せにしちゃる!!」と、見方を180度変更。
会社の屋上でヨシカが弁当箱をすり抜けて二に抱きつくシーンに至っては、「この男後ろから羽交い締めしたろうか」と敵対心を抱くまでに彼女への想いが募っていた。

しかし、、、しかしである!!

処女だということが会社中に触れ回っていると疑心暗鬼になり「妊娠してる」と嘘をつき始めてからだろうか。良かれと思って根回しをしてくれた女友達を〝ポン引き〟呼ばわりし、彼氏を〝処女厨の変態〟と勝手に決めつけ、ファーーーーック!! と叫んだあたりからだろうか。いや、隣人のオカリナ音に「辛気臭ぇんだよ!!」と身勝手極まりない拳を振り上げてからだろうか。

ヨシカを見る目が変わってしまった。

あれ?俺?

自意識過剰で被害妄想と自己愛に溢れる彼女に、どうしても自分を重ねてしまう。こいつは俺なんじゃないか、と。そこからの展開は〝視野見〟じゃなきゃ観てらんないほど身につまされ、痛々しい。

だからラスト5分でびしょ濡れの二が登場したときは思わず、「ヨシカ(と俺を!!)救ってくれぇえ〜ぃ!!」と泣いてしまった。2人の恋愛模様を歯ぎしりで睨みつけていた数十分前との落差たるや。完全に情緒不安定である。

この作品の素晴らしい点は、二が「好きになったんだからしょうがないじゃん」と真っ直ぐな愛を表明しながらも、「甘えて全部しなだれかかるのは良くない」と真っ当な距離感を持っているところ。卑屈で傷つきやすく、人を信じないヨシカがようやく心を開く男として納得がいく。頼むから幸せにしてやってくれ。

自分の殻にとじ篭るひねくれアンモナイトなヨシカを肯定する「君のことがわからないから好きなんだ」
彼女を〝異常巻き〟にした10年間の孤独は、二と出会うためにあったんじゃないかなぁ〜。
運命の存在を感じさせてくれる最高のラブストーリーに、勝手ながら震えさせていただきました。

自分の邦画史上一番カワイイ女子キャラ・ヨシカを体現した松岡茉優マヂ神!!!
塩辛亭ショッパイ

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