カツマ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のカツマのレビュー・感想・評価

4.3
俳優の演技がここまで素晴らしいと思える映画も珍しい。メリル・ストリープの、心を刻んだうえでの決断のシーンには自然に涙が溢れてしまった。指は震え、押し潰されそうになりながら、それでも彼女は凛としていたのだから。
近年はドラマもので秀作を連発しているスピルバーグ、彼の一つのベクトルの到達点とも言える完成度だろう。助演のトム・ハンクスの演技も素晴らしく、並みの俳優なら彼の演技に食われてしまうところだが、そこはメリルの存在感だ。双頭の巨人がズッシリと立ち、重厚な人間ドラマと娯楽性を高次元で結実させています。

ワシントンポストの社長(新聞発行人)キャサリンは、株式の公開に向けて弁護士と念入りに調整を続けていた。
一方、新聞業界は揺れていた。ニューヨークタイムズがベトナム戦争に関する機密文書ペンタゴンペーパーズをスクープしたからだ。ワシントンポスト編集主幹ベン・ブラッドリーは、タイムズに先を越されたことに業を煮やすも、別ルートから最高機密文書を入手。政府から刑事告訴されたタイムズに続く形で、機密を暴露しようと奔走する。
しかし、会社の存亡と報道の自由とを天秤にかけた社内の対立は激化。最後の決断はキャサリンに委ねられることになり・・。

社長の器ではないと揶揄されてきたキャサリンが、自らの声で、意思で、絶望的なほどの決意で下した歴史的な瞬間は、鳥肌が立つほど鬼気迫るものを感じさせた。報道の自由のため、正義のために戦った戦士たちの記録が確かにここにはあったのだ。

ラストシーンはある事件へと繋がり、この戦いには続きがあることが示される。そしてその戦いは未だに続いていることは、現政権発足後すぐに、スピルバーグがこの製作を立ち上げたことからも明らかだった。
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