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蜂の巣の子供たちのzhenli13のレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.4
パーフォレーションが端に見える画面。冒頭のプラットフォーム、下関駅に似てるなぁと思ったらほんとに下関駅だった。その意外なアングルから子どもたちが勢いよく駆け出す導入だけで涙が出た。何だろう。哀れとかそういうことでない。
ほんものの戦災孤児たちの棒読み科白。清水宏監督は彼らに演技をつけたのだ。ネオリアリスモにもカネフスキー『動くな、死ね、甦れ!』にも先んじている。戦災孤児たちが戦災孤児を、ある意味寓話のようなフィクションとして演じるメタ認知的経験は、一体その後の彼らにどんな影響を与えただろう!
しかも1941年公開の『みかへりの塔』と地続きである。復員の「おじさん」はみかえりの塔出身でる。身寄りの無いの男と身寄りの無い子どもたちのロードムービー。まるでアンゲロプロスのよう。
錦帯橋では宇部から別府へ行くという孤児ともすれ違う。トラックに乗って海辺の道を走るロケーションはもしかして宇部かもしれない。宇部は父の出身地で幼少の頃はよく訪れていた。広島は被爆後3年でまだ瓦礫だらけだ。

深い深い山懐の急斜面を病気の仲間をおぶって登るシーンは圧倒的な美しさゆえに残酷。『みかへりの塔』のときもそうだったが、労働を基盤とした共同体として生活することの尊さを前面に出しており、まだ小学1年から3年くらいの子どもたちが大人と全く同じ重労働に従事する姿は現代の視点からするとヒヤヒヤする。しかしショットと演出の凄さに圧倒され押し通される。みかえりの塔の子どもたちが再び蟻の子のように雪崩のように押し寄せてきて、無条件に号泣。

外出自粛期間から観始めた清水宏監督作品はこれで10作目。
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