エイデン

スキン~あなたに触らせて~のエイデンのレビュー・感想・評価

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2000年
特殊な性癖を持つ男性シモンは、ある娼館を訪れていた
そこに電話が掛かり、妻のクラウディアに赤ちゃんが生まれたことを知る
それを聞きながら自分自身に迷うシモンに、女主人は自身を受け入れることを説き、ラウラという11歳の少女を勧めると、明日また来るように言うのだった
翌日 娼館を訪れたシモンの前に現れたラウラは両眼が存在しない奇形の症状だった
ラウラが披露した美しい歌声を聴いたシモンは涙し、彼女にピンクダイヤモンドをプレゼントすると、それを両眼に嵌めてやるのだった
2017年
口と肛門が逆についている女性サマンサはその顔にコンプレックスを抱き、普通の口を持つことに憧れていた
レストランでの食事を終え、家に帰ろうとしたサマンサは偏見を持つ若者達に襲われ、急いで車に乗り込んで逃げ出すが、その途中何かを轢いてしまうのだった
一方 クラウディアの息子クリスティアンは身体完全同一障害(BIID)という精神病を患っており、自身の脚を不要と考え、歩けるのに車椅子を使用し、脚に対して自傷行為をするなど問題行動ばかり起こしていた
父親のシモンは失踪し、クラウディアはどうしようもない苛立ちをクリスティアンにぶつけ続ける
奇形で顔の半分が崩れているアナは火傷でほとんどの皮膚を失ったギリェと付き合っていたが、別れたはずの元カレで奇形しか愛せない性癖を持つ孤独な男エルネストにつきまとわれていた
軟骨無形成症のバネッサは、金目当てのアレクシスに勧められ小さなキャラクターの着ぐるみを着て仕事をしていたが、自分の人生に納得できていなかった



独創的なストーリー、インパクトあるキャラクター、強烈なメッセージ
全てが混じり合ったパステルピンクのブラックコメディ・ドラマ

ビジュアルの暴力
一度観たら忘れられない映像が次々と脳を揺さぶってくる
ただそれに惑わされずに観ていくと、なかなか深いテーマが隠れている

登場するのは主に変わった身体的特徴を持つ人々と、そんな彼らを愛するという変わった性癖を持つ人々の2種類
前者は多くの人に受け入れられず、気味悪がられたり、何かに利用されたりと苦しみ、後者は大っぴらにできずに密かに肩身の狭い思いをしている
それぞれがそれぞれなりに自分自身への悩みを抱え、残酷な現実を懸命に生きている
一見とっ散らかった人の群れが主役に見えるけど、そこは以上のように定義したほうがわかりやすいと思う

では更に、共通したテーマは何かと言うと
本作が長編デビューとなるエドゥアルド・カサノバ監督は、インタビューで「美や幸福は人々を支配する独裁者だ」と答えている
そこからもわかるけど、自分も含めて多くの人はそうした価値観に支配されている
顔立ちが整っているのが美しいだとか、結婚をするのが人生の幸福だとか
逆を言えば、そうした価値観を振りかざして、女は化粧をしないとならんだの、未婚の人へ「かわいそう」なんて言葉が出てくる傲慢さを出す人もいる
近年マイノリティーに目を向ける風潮が出てきてはいるけど、なかなか無くなるものでもない
そして個人的に本作の良さが出てたのは、そうした価値観に縛られるマイノリティー本人へ目を向けさせてくれたことだ
自分は他とは違うという自認から来る、自分への卑下だったり否定という点
つまりは、価値観を破壊して違いを受け入れることをテーマとした、相手や自分を愛せない人へ送るラブレターとも言える作品だと思う

SNSなんかやってると、まあ排他的な考えの人の多いことに驚くこともあるけど、そうした考えを如何に捨てられるかというのも鑑賞のポイントだと思う
なかなかに強烈ではあるけど、ぶっちゃけ本作を観て「気持ち悪い」って感想のヤツとは縁切っていい時代になりつつある
あなたの寛大さが試されている
そしてもう一つの難題が
あなたは自分を愛せますか?
エイデン

エイデン