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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのemilyのレビュー・感想・評価

4.4
カナダの女流作家モード・ルイスと彼女の夫の半生を描いた作品。モードは子供の頃から重度のリュウマチを患ってるが、絵を描くのが大好き。ある日エベレットの家で家政婦募集の張り紙を見て応募する。トラブル続きだったが徐々に惹かれあって結婚し、たまたま絵を気に入ってくれた客により絵の才能が開花していく。


壮大な田舎に、可愛い街並み、ポップな色彩の中、偏屈な男エベレットとの暮らしが始まる。二人の距離感は自然なかたちで縮まっていき、暗い部屋が可愛い絵で埋まっていくと、二人の心も穏やかになっていく。その過程を短い時間の中で丁寧に紡ぎ、日々の移り変わりをしっかり感じさせる描写が見事だ。しかし本作は結婚で幸せを掴むことで終わってない。

真っ白なキャンパスがカラフルに染まれば、人はその暮らしに慣れていく。小さな幸せを噛みしめることができた二人だったが、モードは一気に有名人になり、家は人で溢れかえる。そうなった時人は目先の幸せを掴もうとするだろう。しかし二人は違うのだ。小さな幸せを積み上げていくことこそ大事で幸せは日々の生活の中にちゃんとあることを改めて感じさせてくれる。

代わり映えのない夕日だって二人で見れば美しく輝く。染みる音楽と穏やかな田舎の景色、小さくてボロい家だけど、偏屈で貧乏な夫だけど、それこそが大事で貴重なんだとしみじみと感じさせる。

二人の演技も抜群で、繊細な表情や動きから愛や幸せをしっかり感じる。心温まり、大事なものを思い出させてくれる作品。
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