ぬーたん

あさがくるまえにのぬーたんのレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
3.8
フランス・ベルギー映画。秦基博のイメージソングが美しい。ビル・ゲイツも絶賛したという。脳死からの心臓移植。提供側・される側・その橋渡しの医療関係者たち。それぞれの大事な命の1日を描く。臓器提供の是非を問う、或いは家族の迷いや苦しみを描くという重苦しさはない。セリフは少な目で淡々と、そしてその心情を表すかのような抽象的で美しい映像が印象に残る。
監督はカテル・キレベレという女性だ。繊細でセンス溢れる映像。
知らない俳優ばかりなのがリアル。
提供側・シモンを演じた青年は綺麗な顔で金髪の流れる髪、澄んだ瞳。
夜明け前、彼女の部屋の窓を開け優しく彼女の方を一瞥した後、スルリと飛び降り、自転車で坂を降りていく。彼女の家は丘の上に建っている。
そこから友人2人とサーフィンへ。
波がリアルに迫って来る感じ。そこに居るかのようなカメラ。波の内側からの映像は面白く、一枚の絵のように美しい。躍動感があり、生きている!と感じるシーン。
そして帰り道は、風力発電の他は何もない、なだらかな一本道は、睡魔を引き起こす。やがてその道は波となって襲ってくる。
その映像の素晴らしさ。セリフが少なく、いつどうなるかとヒヤヒヤしながら観る。
遺された母の想いが切ない。3人で寝るシーンは胸が締め付けられる。どう決心したかは描かれていないが、息子への愛が伝わって来て観ていて苦しいほど。
される側・音楽家の女性は、離婚してるらしいが、2人の息子とは微妙な関係だ。特に下の子は‥。同性愛の話も織り込んで、過去の恋人との再会も。ちょっと盛りだくさん過ぎかな?とも思うが、こちらの人生も迷いと諦めと家族愛と希望と。
繋ぐ側・ここで一番印象的だったのは、移植前にシモンに話しかけイヤホンで音楽を聴かせるトマという男性。ジャケにもなってるこのシーンは泣けた。
重く暗くなりがちな題材をスタイリッシュな映像と色彩、セリフを少なく静かに描くことで上手く作っている。
手術シーンは上からのカメラでリアル。ちょっとやり過ぎか。
ラストはまた丘の上のシーンへ。
観終わった後も爽やかな作品。
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