大野

シェイプ・オブ・ウォーターの大野のレビュー・感想・評価

4.0
メンタル安定してる時に、
見ることをオススメする作品。

思いの外セックス映画だったと知り驚愕。
どういう意味かは後述します。


特殊造形で有名な、
ギレルモ・デル・トロ監督による、
ファンタジーラブストーリーです。

時代背景としては、1962年、
アメリカとソ連が対立している冷戦時代。

今作には、時代や社会が作り出す差別や、
少数派とされる人たちが、
登場人物に濃く反映されており、

・声を出せない独身中年女性
・定職につけない同性愛者
・黒人労働力
・国からの圧力
・故郷から拉致され実験される原住民
・アメリカの理想とする家族
・絶対的な上下関係

タイトルを直訳すると“水の形“となり、
意訳するとすれば、
“形は違えど、本質は同じ” でしょうか。

「彼を助けないなら、
 私たちも人間じゃない」

普通と違うというだけで扱いを変えるならば、
人ではないと言うならば、

それは自分たちを排除する奴らと同じことになる、
自分たちを人間ではないと認めることになる。

かなりキレのあるセリフで印象的でした。


イライザの元魚人説は、割と濃厚かと。

魚人に治癒能力があることが判明し、
エラ呼吸できるようになった点から察するに、

“昔負った傷で喋れない”
という作中の推察はミスリードで、

エラの機能が失われていただけで、
元から喋る機能は備わっていなかった、
という可能性。

そして冒頭、セックス映画と書いたことが、
ここから繋がるのですが、

イライザの自慰シーン…


“水中”でしたよね。


魚類の子作りって、交尾ではなく、
メスが水中に卵を産み、
オスがそれに精子をかけるという、
「体外受精」なんですよね。

作中、魚人に卵を与えていましたよね。


そういうことです。

見方を変えれば、
性的アピールとも取れるのです。

衣装が赤になったのも、
繁殖期で色が変わる生体みたいっていう。

要因らしき要因なく惹かれあったのも、
同族ならではのフィーリングとすれば、
納得もいくかなと。

そういった辺りから、
魚人説は濃厚かなと思います。


ラストを魚人となりハッピーと締めるか、
それはナレーションによる推察で、
実はバッドエンドだったと締めるかは、

あなた次第d( ̄  ̄)


水圧で部屋がぶっ壊れなかったり、
謎ダンス突入などはツッコミたかったですが、

綿密に作られており密度が濃く、
終始描写がとても美しかったですし、
メッセージもかなり濃厚で、

大変満足でございました。

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こっからは小ネタコーナーです🥷


悪役ストリックランドの切られた指には、
どうやら意味があったようで、

薬指=奥さん、小指=子供 となり、
イライザに惹かれるにつれこの2本が腐っていき、
最後、イライザを追いかける時には、
指を捨てる=家族を捨てる
といった意味が含まれているっぽいです。

彼が読んでいた本「POSITIVE THINKING」は、
実在するノーマン・ヴィンセント・ピールさんの本で、
トランプ大統領が師と仰いでいる人物らしいです。

ブラックジョークというか、なんというか。


トイレの尿の撒き散らしは、
哺乳類特有のマーキング。




“青緑“と“赤”の配色。

青緑には「虚栄」「理想主義」
などの意味合いがあるらしく、

衣装、ケーキ、本、車カラー、タオル、水の色、
映像全体に色調補正が入っているなど、
あらゆる場面に当てられており、

赤には「愛」「命」「変化」「危険」
などの意味合いがあり、

衣装、映画館、血など、
要所要所で鮮明に使われていましたね。


今作は最初から、
主役をサリー・ホーキンスにすると決めての、
当て書きだったそうな。


同監督による小説もあるそうで、
かなり情報量も増えている模様。
途中で猫が食べられるシーンがありますが、
小説では自ら望んで食べられていたそうな。

魚人は「ギル神」という名の神設定になっており、
猫は会った瞬間から特別な存在と気づき、
身を捧げたとか。

まーじか。


あと、国によってモザイクの箇所が違うらしい。
日本版はストリックランドのお尻。
大野

大野