大野

騙し絵の牙の大野のレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.6
出版業界を通じた、
デジタル化が進む現代へのメッセージ作品。
邦ドラマの縮小版って感じ。

大泉洋さんが好きって人であれば、
より楽しめるかな?って感じです◎

ただし、
“ 中盤までは “ ですが。

理由は後ほど。

(一応、原作まとめを読みましたが、
 改変されすぎており、
 もはや別作品です。

 小説の方は、少し大人向け。)

※ それなりに調べていますが、
 改変されすぎており、原作未読のため、
 以下、多少誤りがあるかもしれません🙏


今作には、原作小説があり、
“ 執筆のスタートが、かなり特殊 ” です。

というのも、

雑誌『ダ・ヴィンチ』の表紙を、
大泉さんが多く飾っていたことが発端という。

どういうこと?ですよね。

この雑誌では、表紙を飾った人が、
オススメ本を紹介するページがあるそうで、

大泉さんは、何度も飾っていたこともあり、
インタビューの際、逆に編集の人に、
こんな質問をしたそうです。

「映像化された際、
 僕が主演できるような小説は、
 ありませんか?」

それを聞いた編集サイドは、
その手があったか!と。w

検討した結果、小説家の塩田さんに、

「大泉さん主演で執筆してみませんか?」

と提案するに至ったらしく、

そういった経緯から、
今作は原作の時点で、主役を大泉さんとして、
制作(当て書き)がされていたそうです。

(当て書きとは、
 事前に俳優を決めて脚本を書くこと。
 小説では、かなり珍しい。

 塩田さんはその後、
 大泉さんに4年間取材し、
 振る舞いや喋り方などを研究し、

 大泉さん本人にも、
 打ち合わせに参加していただき、
 監修してもらうなど、
 とことん落とし込んだとのこと。
 
 小説の表紙も大泉さんです。
https://www.amazon.co.jp/騙し絵の牙-角川文庫-塩田-武士-ebook/dp/B081HY3ZCD

 小説は、400ページを超えるそうな。)


しかし、
実際に作品を観てみると、

、、そこまで大泉さんっぽいか!?

と、僕は思いました。


それもそのはず。

小説から映像化するにあたり、

大胆な改変が行われており、
人物像までも改変されていたようで、

完全に別キャラです。道理で。

撮影中、
“大泉さんっぽい”って理由で、
何度もNGが出ていたらしく、

大泉さんに、
「私が出た映画の中で一番、
 私っぽくなかった」と言わせるほど。笑

(公開挨拶 19分辺り〜)
https://www.youtube.com/watch?v=DN4MH_hJ5Ts


原作での主役は、
「天性の人たらし」と言われており、

気さくで人当たりがよく、
ふざけもする口達者。

苦労も多いが、秘めた熱意があり、
信頼も厚く、自然と周りに人が集まり、

そして騙されていたっていう、

いかにも大泉さんって感じでありながら、

実は最後、騙す側でした、、!
って感じらしいのですよ。


いつも騙される側の大泉さんがまさかの、
策士的に騙し返す側ですよ?笑

それだけで面白そう。笑

(大泉さんが騙される側というルーツは、
 “水曜どうでしょう”
 という番組からです。笑)


ストーリーも原作では、

速水は、トリニティ “ 一筋 ” の男で、
周りで色々な問題が交差する中、
速水は家庭も持っていたが問題が多く、
関連会社の衰退にも悩む中、

副編集長がスパイと判明!
信頼していた高野にも騙されていたと知る!
徐々に明らかになる速水の秘密!

雑誌の継続に奔走するも、
人望だけでは組織には敵わず、

、、トリニティ廃刊。。

、、、すべて終わった。


と思いきや、

裏で用意周到に手を回していた速水が、
起業して旨味を全て掻っ攫う…!

完全な一人勝ち!

って感じらしく、
何度も言いますが完全に別物。笑

(高野とは、まさかの不倫関係だし、

 二階堂先生も最初から仲良し、
 他社と上手く策略し、
 パチ台やアニメ化にも手を出します。)


変わっていないキーポイントとしては、
大泉さんが編集長役ということ、
先代社長が亡くなってから話が展開する、

ってくらいのようで、

重要な人物が大量に削られていたりと、
本当に何もかもが変わっています。


大泉さんを当て書きしたキャラが、
完全消滅していたのは、
非常に残念でしたが、

映画としては、諸々の改変がされていて、
これはこれで正解だったかな、
とも思いました。


とはいえ、良いと思えたのも、
後半が始まるまで。

ここからは、少々辛口になりますが、
レビュー冒頭の、
“ 中盤までは ” と言った理由です。


後半にも、良い部分はあるのですが、
展開があまりにも雑。雑すぎます。

一言でいうなら、

“ 迷子 ”

高価本に関しては一考ありますが、

展開含め、登場キャラの魅力が、
ことごとく分からなくなりました。


一番雑に扱われていると感じたのは、
東松ですね。

悪人に仕立て上げるためか、
急にファンド要素ぶっ込まれたかと思えば、

(序盤の会食は、伏線とは言えないレベル)

あっさり撃沈、退場。

、、、一応この人、社長ですよね???


物流センターが、
先代からOKとされていたのは、

実は、
“ 薫風社を進展させるという、
 KIBA計画の上で “ という話でした。

時流により、

物流センターは時代遅れとなり、
KIBA計画は、
デジタル生存に切り替える必要があった、と。

東松がこれを知らされていなかったのは、
先代に止める力がなかったこと、

あと、“ 会議中のタバコ “ から、
察するくらいしかないですが、

古い体質の人間であり、
“ 小説薫風 “ よろしく、

会社から排除する必要がある、
と見なされていたから、かと。

確かにファンドの雰囲気で、
東松を潰す筋は通るように見えますが、

社のために尽力もしてたと思いますし、
速水の意見を多く採用するなど、

臨機応変で話の分かるタイプだったのに、

後半はなぜか、
急に頭カチカチおじさんに変貌。

いやほんと何があった?って感じですよ。

というか、
速水達の臨むままに走っていたのに、

あの叩き潰す空気は、
完全にオーバーキル、、笑

その後は、
急に人が変わったように弱ってて、
別人かと思いました。


一応ここで良かった点としては、
流れはかなり雑でしたが、

東松最後のセリフ、
「走らされていたのは俺だった」
でしょうか。

前半に、

速「鶏ですか?サラブレッドがいいです」
東「それだけの走りを見せてみろ」

とありましたが、

東松はこの時に既に、
速水に走らされていたっていう。

この東松の最後のセリフは、
今作を表す代表的なフレーズかと。


ちなみに、
冒頭のシーンも掛かってます。

先代、喜之助氏が犬と散歩していて、
亡くなるシーン。

手綱を持ち、
犬をコントロールしているつもりが、

実際に走らされていたのは自分で、
そのまま、亡くなってしまう。

老衰(時代)には敵わない。
真にコントロールしている側が生き残る。

これらは、そういう表現だったのかなと。


( “ KIBA “ の名の由来。

 東松は「言葉、イメージ、場所」
 としていたが、

 壁画プレートのアップ、
 「K.IBA」からするに、
 先代の伊庭喜之助は、
 同じイニシャルである伊庭惟高に、

 “ 良い形で薫風社を渡したい “

 という意味でつけられていた、
 ということかと。
 なんだそれ、って感じですが。

 速水達がいつから気づいていたのか等は、
 作中では分かりませんでしたが、

 遅くても、
 惟高が速水に協力を取り付ける時には、
 全て気づき、計画が組まれていた。
 ということかと。)


そして後半、迷子にさせられたのは、
東松だけではありません。

速水に惟高、高野に神座に矢代と、

もうほぼ全員です。


矢代の、
「良い思い出になりました(´∀`*)ハハッ」

から崩れてった印象です。

矢代は迷子というよりは、
サイコパス発覚ですが。笑

いやほんと、
恨みも無いのによくあんなこと出来るわw

城島咲が捕まったインタビューの後、
速水の腕を振り払ってましたが、
あれも演技だったとなる訳で。

暴漢のきっかけ作った要因でもあるのに、
すでに過去のこととして、
良い思い出とか言ってますよ。(^ω^;)コッワ


ここからは、ほんとの迷子たち。


速水は、トリニティ廃刊に関して、
東松が通達してくる前から、
既に筋書きとしてあったということなので、

過去のクビにされてきた件や、
編集長としての振る舞いなどから伝わる、

“ 本当に面白いことを伝えようとする、
 真っ直ぐな人 “

という像が崩れ、
ただの惟高の道具に見えましたし、

それで世界だなんだと、
よく分からないことを言ったかと思えば、

あっさりしてやられ、
収監された城島咲に擦り寄るという、

急に万策尽きた感。

うん、、どうした?


そして神座を取られただけで、
Amazonから提携を見直されかねないという、
惟高の弱体化。これマジで謎。

(映っていないところで、
 他にもあったのかもしれないが、
 原作とかけ離れているため、
 真相は闇の中。)

そもそも神座の件は、
後発で偶然だったはずなのになぜ?

速水に八つ当たりする姿は、
余裕のなさが露呈し、小物感がにじむ始末。

速水も惟高も、
そんなタイプじゃなかったのに、
急にグラつきすぎだろ。笑


高野に至っては、人格を疑うレベル。

速水は、
出版社の存続に必要なこととして、
薫風を瓦解させたのに対し、

高野は自分勝手な行動で、
薫風を潰した形になり、
かなり恨みを買うやり方してるのに、

私頑張ります!って無邪気にニコニコ。

(会社の仕事を、
 急に辞めて丸ごと掠め取っていくって、
 相当なクズですよ。笑

 神座の原稿にしても本人にしても、
 高野は毎回見つけるまでで、

 引き寄せるための段取りを作ったり、
 契約?に漕ぎ付けて、
 販促してたのは速水や会社な訳で。笑

 なんなら速水は、
 神座の担当を任せたいとすら言っていた。

 その速水に、
 「人を騙して、面白いですか」
 ってキレてたの誰だよっていう。

 一応会社を辞めてから、
 勝手にペン入れしたものを持って行った、
 ってことかと思いますが、

 「君の案の方が面白そう」
 と言われたからといって、
 やって良いことではないかと。

 一応罪になるのか調べたところ、
 営業の根幹にまつわる場合、
 守秘義務に引っかかる可能性アリと。

 一般的には、入社時の契約書や、
 退社時の追加契約書に、
 その手の決め事を記載するそう。

 描かれていない点が多いので、
 今作においては不明ですが。)


最後の神座も同様。
勝手に出版されて姿消したくせに、
勝手に話進めて別で出版。

別作品にしたとはいえ、
会社は「22年ぶりのカムバック!」
って準備していましたし、
掠め取ったことに他ならないかと。

もうツッコミが追いつかず、
色々と迷子なまま、怒涛の進行。


、、なんだこれ。でした。

トリニティのメンバーのような視点で、
作品を観ていただけに、
速水や高野には、胸糞感すら感じましたね。



実店舗のみの高額本、
勝手に考察してみたのですが、

(伏線としては、女子高生が言ってた、
 “ 本しかないので ” ってところかと。)

一般書籍の初版数の基準として、
(利益を得るために設定するライン)

小さな出版社で約2500部、
大きな出版社で約7500部が目安らしいので、

(ここから重版が決まるとヒット作扱い。

 ラノベなど大量に売れる作品は、
 初版の基準は同じくらいらしいが、
 ヒット扱いとなるのは、
 約7万部くらいからとのこと。)

1部1000円として、
1000円×2500部
=250万円の売上が最低ラインとすると、

250万÷3万5千=71.42…≒72

72人が購入すれば、
利益になるとは見なせるかな?

神座の威光が未知数ですが、
もし仮に、雑誌等で話題になった通りのことが、
現実でも起きるのであれば、
見込み客は十分かと思うので、

戦略次第では、勝てる気がします。

(作中では、発売が急に発表されて、
 どこぞが取材したネットニュースが、
 速水の目に止まった。

 って感じっぽいので、
 あれほど人が殺到するとは思えない。)


とはいえ、これは長くは続かないでしょう。

一発目は珍しさで話題になり、
買う人も一部存在すると思いますが、

継続性が無さすぎるし、
購買層が限られるので、
一瞬で廃れる気がする。

ほぼ1発限りの手法かと。

(初版の目安も、あくまで同じ会社で、
 複数出版しているからこその数字であって、
 1本しかなければ、
 もっと売る必要もあると思われ。)


でも、速水に言わせれば、

「今、売れるかどうか。
 同じことに固執してどうする?

 新しい面白いことを、
 次々やれば良いじゃない!」

って言うと思うので、
高野は速水のいうことを実践した。

とも取れるのかなと思い、
今作の現代へのメッセージはここかなと。

まぁ、高野にそんな感じはなかったですが。


参考までに、
1990年以降の国内小説売上トップは、
百田さんの “永遠の0 (2003) “ 、
546万部です。

仮に百田さんが、
永遠の0出版後、姿をくらましていたとして、
19年ぶりに新作を出すとします。

さて、皆さんなら、
3万5千円払いますか?

僕はきっと、
ネットニュースを一回開いて終わりですね、、笑

あ、映画化されたら観るかも、、?


(ちなみに、
 世界ベストセラーランキング
 (1990年以降)は、

 “ハリーポッターと賢者の石(1997)“、
 1億700万部 。

 その次が、
 ”ダ・ヴィンチ・コード(2003)”
 8000万部です。

 J・K・ローリングさんが、
 20年後に超大作の新作3万5千円、、

 オンラインでこれなら、
 ちょっと悩む…かも。笑)

今回は小ネタ溢れなかったのでナシです。笑
バカ長すぎるだろってね。すみません。笑


p.s.(20.02.11)
予告見ました。これはアカンw
https://www.youtube.com/watch?v=ujyUSphx648
脚色賞モノ。切り貼りが上手過ぎます。笑
大野

大野