大野

プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵の大野のレビュー・感想・評価

4.0
ドキドキ、ハラハラしたい方、
お待たせ致しました。

オススメです。

実話が基になっており、
舞台は1979年、南アフリカの刑務所。

銃殺に躊躇いのない監視者もいる中、
脱獄の準備を重ね、決行する話です。

脱獄を目論む主人公らは、
白人主義(アパルトヘイト)に、
抵抗しただけで捕まった善人なので、
心置きなく脱獄を応援できます。

それ故、感情移入しやすく、
“ 頼むから見つからないでくれ…! ”
と、肝が冷えます。


原作は、2003年に出版された、
実際の脱獄者の書記となっており、

今作は、その脱獄部分をメインに、
再編集がなされた作品になります。

(原作にあり、
 今作に描かれていない部分としては、

 主人公のアパルトヘイトへの知覚、
 大学生活からレジスタンスとの接触、
 メンバーとしての訓練、
 レジスタンス活動、
 脱獄後の240kmを超えるヒッチハイク移動、etc…
 ティムさんの人生が描かれているとのこと。)


当時の光景としては、
過激な武力抗争も起きており、

ティムさん達の行動は、
どちらかといえば些細なもので、
組織内でも、かなりの末端だった模様。

(デニスら幹部とは対照的。)


しかし、
脱獄を成功させたというこの報せは、
レジスタンスの士気を爆上げし、

国際的にも人質奪還とされ、
支配者らに、
激しい当惑と敗北感をもたらしたとのこと。

(国際的にも当時から非難はされており、
 経済制裁もされていた模様。)


現代の刑務所においては、
セキュリティシステムの進化により
脱獄は不可能に等しく、

もし今、こんな白人主義の世界がきて、
理不尽に収監されようものなら、

” 私は良心の囚人だ ” と、
腹を括るしかないかも。

22年もの歳月を刑務所で過ごした、
あの、デニスのように…


デニスといえば、
脱獄には反対しておきながら、

歯磨き粉に隠してくれていたお金を、
最後ベッドに置いてくれていたり、

終盤、電球を割って叫んでたのも、
本人は時間稼ぎのつもりだと思いますが、

偶然ながらも、
看守がトイレのラバーカップ🪠戻しに、
用具庫を開けるのを阻止するという、

最高のファインプレーを起こしてたり、
なんだかんだ良い人だよなぁと。


終始ハラハラしっぱなしでしたが、
大きなボロもなく、

何より、
演出とカメラワーク、俳優の自然さが、
とても素晴らしく、

おかげでどっと疲れました。笑

いつまた鍵が折れることかと、、💦

写真立てで誤魔化せるのか疑問でしたが、

あまりに常識外れだと、
案外気付かないものかもしれません。

仮に刑務所系ドキュメンタリーで、
「写真立てになるって気づいて使ってます」
って一瞬挟まれていても、

ふ〜ん、、変なの(・ω・`)

って流してる気がします。笑

(この誤魔化しが、
 実話だったのかは分からずでした)


もし今、僕が隔離されるとすれば、、

“バカ長いレビュー書くやつは、
隔離(アカウント削除)します。”

でしょうか。笑

僕の好みな、史実に基づく忠実系で、
エンドロールに注釈もあり、
新たなラドクリフさんも見れたりで、
かなり満足な一作でした◎


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここからは溢れた小ネタです。

ティムさんご本人がまさかの、
エキストラの受刑者役で出演してました。

(鍵が折れるもバレずに済んだ後の、
 面会のシーンです。
 ティムがキョロキョロしている隣で、
 面会している囚人役、36:20辺り〜)

youtubeで自ら脱獄の解説までしてます。笑
https://www.youtube.com/watch?v=6YWhfQLWNqQ

脱獄後の計画も綿密に立て、
行動していたとのこと。


作中では、扉は15、
鍵は39本作成したとありましたが、

脱獄時、作中に映っていたのは、
鍵は10個、木鍵で解除した扉は8つ。

看守が開けっぱなしにした扉が1つだったので、
最後の扉の鍵が上手く作れていなかったか、
別の鍵だったということかなと。


ティムとポットラックの、
窓越しの手話もどきは、

“ 新聞が欲しい “
“ 石鹸とタバコはあるか? “
“ OK “
“ あいよ “ っていう交換の合図かと。

(その後の、

 「強盗犯に教育を受けさせ葬儀まで、
  黒人社会ではかなわんことだ」

 というのが、
 ちょっと分からなかったですが、

 新聞は強盗してたのかも?
 教育が拷問なり絞首刑のこと?)


途中、
スティーブンが着膨れしていたのは、
新しく収監される囚人が脱いだ私服を、

看守の目を盗んで掠め取り、
重ね着して戻ってきたから。


アパルトヘイトという言葉は、
“分離、隔離“ を表す、
アフリカーンス語から。

広義としては、
白人とそれ以外を区別するものだが、

日本人は経済上の都合から、
名誉白人という扱いに。

(南アにおいて、
 差別こそされないが、

 不動産取得など諸々の権利は、
 基本的にナシって感じ。)

元々南アフリカは、
人種差別的立法の傾向があったらしく、
1911年の労働法、
1926年の産業調整法などを代表に、
既に人種差別の土台が多くあったという。

そして1948年、
それらを推進する新政権誕生により、

確立された政策方針名が、
通称『アパルトヘイト』隔離政策。


アパルトヘイトが、
正式に撤回されたのは、1991年。

ほんの30年前まであった訳で、

現代においても
『Black Lives Matter(BLM)』などが、
世界のトレンドにも挙げられるのを見るに、

完全に解消されたとは言い難そう。

(BLMの由来:
 2012年、
 ただフードを被って歩いていただけの、
 アフリカ系アメリカ人の高校生が、
 
 自警団の男性に不審者と見なされ、
 射殺されたのがきっかけ。

 少年は、
 武器も何も持っていなかったにも関わらず、
 男性は正当防衛とされ無罪放免となり、

 活動家のアリシアさんが、
 SNSで#BlackLivesMatterのタグをつけて、
 判決の批判を投稿したことに由来。

 2020年にアフリカ系アメリカ人の男性が、
 白人警官に8分46秒も首を圧迫され、
 死亡した事件をきっかけに、
 一気に世界に広がった。

 BLMの訳し方としては、
 直訳は「黒の命の件」
 意訳は「黒人の命も大切に」かな?)


今作は、
アナン監督にとって長編デビュー作。


ラドクリフさんは役作りにあたり、
ティムさんご本人にも取材していたようで、

ティムさん曰く、
根掘り葉掘り熱心に尋ねられたとのこと。

後の英国紙にてティムさんの記事があり、
ラドクリフさんを素晴らしい俳優だと、
振り返っていたそうな。


今作と類似点の多い作品として、
『抵抗 -死刑囚の書記より-』
という作品があるそうで、

今作の流れが好きだった方はオススメかも?

(今作同様、
 レジスタンス活動をしていた主人公が、
 捕まって刑務所に収監されるところに始まり、
 囚人たちの結束のもと、
 脱獄を完遂して終わる模様。)


ティムの脱獄後、彼女ダフネが捕らえられ、
その後会えなかったというのは、
黒人の扱われ方から察するに、

そういうことかと。


p.s.22/03/28

申し訳ない。
ティムさんのエキストラ出演のシーンの、
時間記載が間違えておりました。

誤 1:09:40辺り
正 36:20辺り
大野

大野