えむえすぷらす

シェイプ・オブ・ウォーターのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

5.0
それはベトナム戦争真っ只中のボルチモアでの1ヶ月程度の出来事。
それは孤独な魂同士が出会った愛の物語。
それは秘密を抱えて苦悩する人の物語。
それはモンスターたちの物語。
……そして語り手が心の底からハッピーエンドを願い信じようとする物語。

いろんなオマージュが詰まっている。演じた俳優由来のもの(「オッカム航空宇宙センター」はオクタヴィア・スペンサーのhidden figure由来だろうし、部屋が水で満たされるのはサリー・ホーキンスがお母さん役で出演のPadington由来ではないかと思った。最近の作品の引用元の再引用などこれでもかと入れてきている。

手話を操る女性を主人公においている。彼女は話せないだけで聞く事は出来るのでコミュニケーションの断絶は極端に大きくない。このあたりは思わず「聲の形」(英語タイトルも似てますね)の一方の主人公硝子との違いを考えてしまった。この二つの作品、二人の間での決定的なやり取りのプロセスはよく似ていて不思議な感じがした。

ネコ問題(一応ネコが先に反応しちゃってる展開ではあるのですが)や拷問といった残虐さ、身勝手なマッチョイズムの権化のような警備主任の存在など強烈なストレスを与えるが、その一方で彼らを助けようとする人も現れる。

ラブロマンス、冷戦下スパイ、モンスター、ミュージカル、etc,etc...どれだけクロスオーバーしているのか。凄い作品だと思う。