akrutm

彼女の人生は間違いじゃないのakrutmのレビュー・感想・評価

3.5
廣木隆一監督自身が書いた小説の映画化とあって、結構期待して見たのだけれど、残念ながら平凡な作品という印象しか残らなかった。

小説を先に読んだせいかもしれないが、人物造形が単純かつステレオタイプ的であるし、直接的な感情表現も多く、作品全体に深みや余韻が感じられない。例えば、パチンコばかりしていて働こうとしない父に対してみゆきが怒る場面や、元恋人に対してみゆきが自分の心情を吐露する場面など、直接的に感情を表現するシーンは小説には存在しない。小説では事実を淡々と描くことによって、登場人物の心情を浮かび上がらせることに成功しているが、映像でそれを行うには役者のかなりの演技力が必要になってくるが、残念ながら本作品に出演している役者たちにはその能力がなかったということか。

そもそも、表面的には大人しそうでも芯は強いという小説のみゆき像と異なり、映画でのみゆきは外面的にも内面的にも強そうな感じに見えてしまうので、デリヘルで働いている理由が全然違って見えてしまった。映画を見る限りでは、収入のために仕方なくデリヘルで働いているというふうにしか見えないが、小説を読むと、そんな単純な理由ではないことがわかる。また、小説ではデリヘル運転手(で売れない役者)の三浦との関係を通じてみゆきの心情の変化がうまく表現されていただけに、映画では三浦の扱いが軽くなっているのもとても残念だった。
akrutm

akrutm