脳などにダメージを与えることを目的にするスポーツ、競技人口が少なめなため、勝ち上がるには県内の知り合いを倒さなければならない。
それができるのがハングリーで、具志堅用高はその意味でもすごかったとはボクシング部顧問の弁だった。
それを思い出した。
叫んだり、脱いだりは熱演の条件だが、菅田将暉はまさにこの映画でそれをして、熱演を始めたのだと思う。『共喰い』で目覚めて、この映画で本当に開花した。
『そこのみにて光輝く』も良かったが、これは主演だ。熱が違う。
そこにユースケ=サンタマリアや、モロ師岡が絡むのだから面白くないわけがない。
モロは北野武の『キッズ・リターン』で堕ちてゆくボクサー役だったし、でんでんは赤井英和を役者にした『どついたるねん』での麿赤児の投影だろう。
「日本一不幸が似合う女優」木村多江もすばらしい。
これはボクシングの本質を捉えた映画だが、役者たちの映画でもある。
『書を捨てよ街に出よう』や『田園に死す』などATGのシュールな映画の監督として認識されているこの映画の原作者、寺山修司だが、『サード』しかり、こういう物語も巧いとは。
津軽出身で、標準語が苦手だったが、内にはこれだけ言葉が溢れていたのだ。