まりぃくりすてぃ

おじいちゃん、死んじゃったって。のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

4.0
掻きむしられた。
いい感じに発せられる各セリフが、よそよそしくしか響き合わないんだけど、その“グルーヴしなさ”が醸しだす独特のリアリティーに、私はだんだん心を掻きむしられていったんだ。

でも、カオル叔母ひとりが不つりあいに美しいのは、配役のわりと大きな失敗。
カオル役の水野美紀さんに合わせてほかも美男らで固めるか、もしくは兄二人に合わせてカオルに容姿不端麗の女優を充てるべきだったと思う。
スポーツカーや香典とかガジェットはべつによくて、遺伝子的な“らしさ”だけを私は言っている。水野さんの容姿の登場がもたらした違和感は、作品にとって最初モワレ程度に軽かったが、後へ進むにつれ、せっかくの独特の掻きむしり感を減らす裂け目になった。終盤の初老兄弟の取っ組み合いが半端演技だったことなども、はっきり災いして。
戯画的な者と、葛藤はあるが滑稽じゃない(イケてる中身をもつ)者へと、結局仕分けされちゃったストーリー。すなわち、主演・岸井ゆきのさん(をはじめとした若者たち)+美しく地位も財力もある孤独な叔母役、をイケてる者らとして描くのが確信犯作業だっていうなら、二階堂ふみさんと鶴田真由さんの『ほとりの朔子』(2013年)でも観ておけばとっくに充分だってば。

あと、光石研さんは、『風音』(2004年)でつみきみほさんをレイプした演技が迫真すぎたために、ほかに彼のどんな演技を見ても力を出し惜しみしてるような気がしちゃう。