鬱屈した感情を描く映画は数あるけども、これほど何も起こさない映画も珍しい。
発砲の仕方が山下敦弘監督の『松ヶ根乱射事件』的だが、松ヶ根の方がはるかに発砲に説得力がある。
先日、訃報が伝えられた青山真治監督は『Helpless』で、鬱屈が爆発していく過程をバイクを用いて描いた。
『リバーオブグラス』の2人は、ただ鬱屈を繰り返し、繰り返し、戻っていく。浅野忠信のバイクに比べ、遥かに風を切らない車で。
誰にも追われない、
なんのカタルシスもない逃避行。
ロードムービーと呼ぶには短すぎる走行距離。
ただ「逃避行があった」のは紛れもない真実で、それは2人を変えるに足るものだったということなのだ。
小学生の頃、下水道の中に友達と潜り込んでみたことがある。数十メートル進んだら、ただ暗いだけの風景に飽きて、すぐ戻った。
それでも、僕らにとっては心に残る旅だった。近所の公園とは違う光景があった。
当時の僕が見たら、彼らの旅は壮大に映っただろう。