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ゴールデン・リバーのkissenger800のレビュー・感想・評価

ゴールデン・リバー(2018年製作の映画)
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ヨーロッパ映画は好きじゃなくて。
店を出た後、「俺が置いてきたチップが少なすぎることはないと思うけど多すぎて逆にバカにされたりしてないか気を回す」的な、余計な神経を自分が勝手に使ってしまってぐったり、とでもいいますか。
それに比べ明朗会計なハリウッドのお気楽さ。
みたいな人生なのでかつて『ディーパンの闘い』(2015)を見たこと自体ほんの出来心だったのですが、びっくりするほど奥行きがある拾い物。っていま思うと図々しい感想で、なんだよ監督のことを自分が知らなかっただけで大物なのか。とこっそり心にしまっておくことに。

という話から始めたのは、途中までこれを(その「ディーパン」の)オーディアール作品だと知らずに見ていたから。そんなことがあるのかとお思いですか。あるんだ。俺も驚いている。

映画ジャンル「ウエスタン」に入る要件
・舞台がUS西部
・時代が19世紀後半
・雄大な自然の前のちっぽけな人間の営み
・ガンファイト
云々を満たしているけど、何かが違う。主演俳優4人の変態性だけでなく、音楽が果たしている役割の大きさ、それはたしかにそう。
だがもっと根本、本人はカラオケ原曲キーで歌ってるつもりで微妙にズレてる気がするのは俺だけ? ウエスタンってジャンルの上位に監督の作風が来てしまうことで生まれた違和感?

そういえば、ですけど、ジャガー星に帰還ってニュースがありましたね。
「亡くなったのかと思いました」と返すひとが少なくなく、別にそうであってもそうでなくても良いんですけど「明確に提示されなければ届かない」ひとが増えている社会への危機感をうっすら覚えたんです。

本作プロットの表面のみを追ってナルホド顔になるのも、ブロマンスとして処理するのも、西部劇へのアンチテーゼとして頷くのも、ぜんぶまちがい「ではない」。
映画は制作者ですら「正しい見方」を規定できるものではないですから。
一方で、今の自分の目が届かないところに何かがあるのかも。そこに気付かず自己流の解釈以外を捨ててしまうのはモッタイナイ、ともいえる。

自分の意見を持つこと、自分の意見にとらわれすぎないこと。
私はこの映画のメッセージをそう受け取って、満腹しました。

はー。主演4人の良さを語り出して止まらなくなるのをなんとか封印できたぞ。
だけど、4人のうちのひとりが理想郷語りを始めた瞬間の思いだけは書かせて。
おいおまえそれは「俺この戦争が終わったらプロポーズするんだ」フラグだ、やめろ、やめとけって!
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