前作が大好きな映画だったので本作も期待していたのだが、残念ながらその期待は叶わなかった。本作を見て、あらためて前作のメリル・ストリープの偉大さを再認識した。本作ではドナは亡くなったという設定になっているので、彼女は映画にはほとんど出てこない。そのせいで、本作は気の抜けたビールのような感じになっている。もちろんドナの若い頃を演じたリリー・ジェームズも素敵だと思う。これがマンマ・ミーアの続編ではなくて、全く別のミュージカル映画であれば、とても輝いているという印象を受けたかもしれない。しかし、いかんせん、メリル・ストリープと比べると、役者が違うという一言に尽きてしまう。
さらに、前作の全体を通じての陽気な雰囲気が本作では影を潜め、前半は暗いシーンが多いという点でもあまり楽しめなかった。さすがに後半は盛り上げていたが、前半の印象を拭うことができず、全体のトーンとして前作の底抜けに陽気なイメージにはならなかった。この種のミュージカル映画ではやはり「楽しい」と思わせることが大事で、その点ではやや失敗に終わったのではないかと感じる。
アマンダ・セイフライドが１人で頑張っていた感はあるが、彼女の良さも前作のように無謀なことを平気で行う無邪気な役のほうが生きるように思えた。今回は、振る舞いが大人になりすぎたせいで、彼女の魅力が十分に引き出せなかったようにも見える。
前作と同じように、メリル・ストリープを全面に押し出さなかったのはなぜなのだろうか。彼女のスケジュール等からくる制約ならば仕方ないが、最初の構想からドナが死んだという設定を考えていたのならば、その時点で前作がなぜウケたのかの認識がきちんとできていなかった気がする。最後のほうに唐突にシェールを登場されるあたりも、メリル・ストリープ・ロスを補うための演出に見えてしまう。
