高橋

ヴェノムの高橋のレビュー・感想・評価

ヴェノム(2018年製作の映画)
2.0
 先日の『きみの鳥はうたえる』ラストの石橋静河のクローズアップのエモーションと比べるべくもなく、近年のハリウッド大作は数百万ドルの役者の顔を撮ることに必死である。大写しにされたそこに映画のかけらを見つけだすのは、困難を極める。
 CGにしてみても、まるで映画にはなんでもできるのだという過信が見てとれる。まず宇宙船を地上に叩き落としてみせ、つぎにはトム・ハーディに軽々とビルを登らせてみせ、そして次の瞬間には頂上から落としてみせる。しかし、それらのショットのどれが垂直な運動を捉えられていたか。どれもそれを捉えてはいないだろう。そもそも映画の画面は横長であるし、実際に人間を突き落とすわけにもいかず、カメラ自体も落ちる物をきちんと捉えながら落下することができず、横移動に比べて縦方向の移動、とりわけ落下には制限が多い。そこで偉大な映画作家は「落ちる」という映像的主題を映画的な選択として潔く放棄したりするのであるが、『ヴェノム』はどうか。CGにはなんでもできるとばかりに垂直の運動がなされるが、CGのなかった時代のそれとまるで代わり映えしないではないか。まったく「娯楽なんだから」ということばを盾にしながら、都合のいいときだけ「面白かっただろ? これが映画だ」と涼しげにいってのける映画である。
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