高橋

フロントランナーの高橋のレビュー・感想・評価

フロントランナー(2018年製作の映画)
2.0
 映画を見て、政治や倫理について語るのであれば、我々は映画の政治性や倫理について語るべきであろう。単なる政治や倫理のための映画ではなく、映画のための映画に触れることで、我々はその豊かさを感じられるのである。
 映画の政治性とは、言語などに国籍がある一方で、映画の画面そのものには国境はなく、無国籍であるという事実である。そして、その無国籍性ゆえに誰もが豊かさを感知し得る映画のためには、作り手の映画的な倫理が問われるのである。映画的な倫理とは、つまり「映画として」画面を見せるかどうかということである。残念ながら、この映画は人間のための政治や倫理について語りながら、映画としての政治や倫理について考えているとは思えない。
 ただし、海に浮かぶクルーザーをロングで捉えたショットは、そこになにか良からぬ気配を感じられたし、エスカレータで女性が降りていくシーンはちょっとホラーでいい。
高橋

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