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ジュピターズ・ムーンのBATIのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
4.6
「ジュピターズ・ムーン」、人はもう神を信じることに疲れている。重力を操れる若者も家族を守ることはできず国を追われる難民だ。オペミスをした医者は人生を失い難民密航の補助でその日暮らしをする。国があってもなくても生きる場所はない。汚い仕事に手を染めるか奇跡が必要だ。傑作。

クライム・ムービーとしてのプロットといい、カメラワークは浮遊シーンに留まらず、「走る(逃げる)」ということに執着してメインの二人を追いかける。「フレンチ・コネクション2」の魂を感じる。主人公が飛ぶのではなく重力から放たれ操るというのは分かりやすいメタだがあの不自由な自由さは詩だ。木製の強力な重力の中で浮遊している月、それがアリエル。難民の象徴であり夢想する自由と解放の姿なのだ。

監督のコーネル・ムンドルッツォは「ホワイト・ゴッド 少女の犬の狂想曲」でも野犬を難民に見立てたストーリーテリングが見事だったのだが「ジュピターズ・ムーン」はカメラワークや絵のコントロールも磨きがかかっていた。自作はガル・ガドットとブラッドリー・クーパーとの「Deeper」。楽しみです。
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