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パスト ライブス/再会のBATIのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.4
先行上映にて。よかったです。序盤はこれどうなのかなと思うような凡庸さなのが嘘のように実態を表していく。「縁(イニョン)」は二人の間には確実に存在するも結ばれはしない。そして12年、更に12年の時を超えて再会する時、お互いの肖像は幻影なのか実像なのかを明らかにしていくようなNY。最早NYはノラの実存そのもので、そしてヘソンの実存は不安のまま街を漂う。まるでエドワード・ヤン作品のように街と連れあって歩く姿が二人の心象をメタ的に現す。表層以上のことをやっていて、かなりテクニカルな作品だった。終盤は「椿三十郎」のような「対峙」まである。序盤にもある「階段」が凄い配置になっててため息が出た。

中心のまだ恋愛関係にもなってない二人が12年後のNY/ソウルに分かれてからFacebookでお互いを手繰り寄せてからの過去の幻像と実像がfixしていきながら、主観と他者の実存が剥離していることを明らかにしていく脚本。前世では二人はどんな関係だったかを執拗に語り合うことでマスキングされていく「このステージでは結ばれない」。まるで「クラウド アトラス」のように感じさせると共に愛というものの無限性≒有限性すら包括していて、所謂恋愛または悲恋の話でもないのは新しい語り口に思える。

大人の自立した女性だが心の中の少女を住まわせるノラを演じるグレタ・リー。成年してもどこか青年のままのヘソンを演じるユ・テオのマッチングが見事。NYにて登場するアーサーを演じるジョン・マガロ(「ファースト・カウ」のジョン・マガロ‼︎)までも見事。作中「男らしい」という言葉がよく出てくるもののマスキュリニティを感じさせない男性たちの「縁」の物語でもあって、そこも私は安心して観れる作品だった。
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