芹沢由紀子

ラブレスの芹沢由紀子のレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.2
私自身は子供が欲しくてほしくてかなり高齢出産でやっと授かったので、この家族の気持ちはまったくわからないのですが、子育ての難しさはなんとなくわかるので、望んでいなくて産んじゃった「デキ婚」や、「産めば何とかなるやろ、愛せるやろ」って安易に手を出して失敗したと感じている家族は、世の中にはゴマンといるのだろうなと暗い気持ちになった。

なにより、子供、相性が合わないとか、障害があるとか、とにかく育てにくい子供に当たってしまった場合、自分の夢や優先順位をあきらめて子育てしないといけないつらさは、かなりきつい人生だと思う。子育てアカウントでも「こんな目に遭うとわかっていたら最初から産まなかった」みたいな書き込みはしょっちゅう見かける。

しかし中年男女の濡れ場とか、下半身の脱毛シーンとか、最初はえんえんと自分は何を見せられているのだ?と心折れかける。


この父親も母親も最低最悪なんだけど、「新しいパートナーとうまくやりたい」という希望にすがるしか生きられないから、そのためには可愛くない息子が邪魔なだけの存在であり、疎ましさ全開の家庭で生活させてしまう。

最終的にこの2人の希望通り、息子が救いの天使になってくれてしまうのだけど、誰一人救われないという地獄のような映画。

物語が進むと、この母親も、自分の家族から愛を受けていないとか、父親はまた「私を幸せにしてね?捨てないでね?」みたいな依存体質の女に子種を盗まれちゃってるとわかる。不毛なルーティーンを繰り返してるんだよね~

それにしても、このお話の中で唯一の良識、「市民団体」の皆さん、いったいどんなモチベーションでこんな大変なボランティアを続けていけるのかものすごく気になった。

ラストシーン、現在集中砲火を浴びているウクライナを知るだけに、今この部分を見ると、住民が内戦で何百人も亡くなって嘆き叫んでいるニュースを見た後で、淡々と「ロシア」とロゴの入ったジャージでルームランナーしている母親のシュールさが際立つよなあ~。ロシア人はな~という気持ちにさせられる。
芹沢由紀子

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