黒川

女王陛下のお気に入りの黒川のネタバレレビュー・内容・結末

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

新元号一発目はこれになったよ。本当はニーベルンゲンの指環の予定でした。

ヨルゴスが普通だ。ヨルゴス風味を残しつつ普通だ。でも物足りないことなどなく、やべえものを観てしまった感はきちんとある。大満足。

彼の作品に前から感じていた既視感は、どうやらピーター・グリーナウェイのようだ。どこか支離滅裂でありながら、強い一貫性とテーマがある作品。それが二人の監督に共通する気がする。

18世紀イギリス、没落貴族のアビゲイルは、女官長を務める従姉妹のサラを頼り宮廷にやって来る。サラは女王から厚い信頼を得ており、同時に素晴らしい参謀だった。一介の下働きとしての職を得たアビゲイルは、従順に勤めを果たし、サラと女王からの信頼を得ていく。

父は掛けに負けそのツケに娘を娼館に売り飛ばし屋敷とともに焼身自殺し、従姉妹からは「この沼は臭う」という言葉を浴びせられ、また父親のことも罵られる。没落しようとも元は貴族であり、未だ高みを目指す彼女に火を点けるには充分な燃料が投下された。
アビゲイルは女王陛下のお気に入りであるサラの地位を奪い、叩き潰し、そして女王の庇護を一身に受ける。そのために、彼女はひたすらイエスマンに徹する。
一方のサラは、女王の良き友であり参謀であり、彼女をアンと呼ぶなど、「ただならぬ」関係にある。だが頭のキレる彼女はあまりに理性的で、女王にすら苦言を呈し、時に冷淡すぎるように見える。女王もそこに少し不満があるらしい。そして女王は自分を取り合う美しい女達の「駆け引き」を楽しむのだ。
女王を奪い合う女同士の争いは一見すると歴史物語的だが、これは普遍的な立身出世と盛者必衰の物語なのだ。権力者に取り入り、服従し、献身的に奉仕する。距離が近すぎる者がいつかその距離故に慢心し転覆する(サラの場合は慢心ではなく、アビゲイルの復讐と恨みの前に隙きを作ってしまったことが原因だが)。従順な下僕が気に入られるのは世の常だ。だが本当に必要なのはどちらであろうか。甘い言葉を囁く愉しい遊び相手か、歴戦の友にして良き理解者か。魚眼レンズで歪められた美しい城の中、我を貫こうとする者共が画面いっぱいに見える演出が印象的。エンドロールに突入する前の女王の部屋にいる者たちのオーバーレイ。アビゲイルの新婚初夜と女王の脚のオーバーラップ。ヨルゴスや。

というとってもストレートなお話。なんですけど進行する女同士の三角関係とその駆け引きこそが、本作のメインテーマなのかもしれない。ヨルゴスらしさがその辺で全開。

ニコラス・ホルトの髭が濃すぎて真っ白に塗ってるのに青かったのじわる。
黒川

黒川