コメディーかと思って見始めたら意外と社会派の内容でした。
私たちはさまざまな社会問題に囲まれて暮らしている。貧困や偏見や格差、不誠実など、見ようと思えばすぐ目の前にあるものだ。
けれどもなぜか人々はそれを見ようとはしない。自分には関係のない出来事だと思っている。
ところが、同じものがひとたび美術館という空間に、アートという文脈に置かれると、人々は関心を持つようになる。
物語は美術館のディレクターを務めるある男がスリに遭遇するところからはじまる。意識の高い人物なので普段から社会問題について考えてはいるのだが、抽象化された問題について議論をすることはできても、目の前にある具体的な問題について対処することに躓いてしまう。
そして、彼の中にある矛盾を露呈してしまう。子供の前では見せたくはない大人の事情、公にはしたくない内部事情など、不都合な本音、偽善が次々に露わとなる。