WadeZenta

ザ・スクエア 思いやりの聖域のWadeZentaのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

傑作。

デュシャンの「泉」を知っている程度の俺でも楽しめた。

美術と資本主義、離れようとすればするほど接近していく両者を自分と他人になぞらえているテーマ設定がまず秀逸。
自分のことであればあるほど無関心に、他人事であればあるほど首を突っ込みたくなる現代の人々をうまく表現していた。

高山宏の「表象の芸術工学」の中でもあった、言葉とお金の近似性に近いことが言いたいと思った。「泉」が一番わかりやすいかな、アートの限界と表現するより、我々の呼んでいるアートや人間関係がどれだけ不安定で曖昧なものなのかということ。絶対的に感じていればいるほどそこからどんどん遠ざかる。
「ザ・スクエア」の四角形がまさにそう。
信頼や思いやりを表現するほどにそこから起こる騒動はどんどん四角形の本質から
離れていく(ある意味近づいている)。
四角形は境界線を表していて、それは絵における額縁であり、アートにおける美術館であり、言葉にとっての「」である。
(「」って四角形に見えるしね)

モンキーマンや狂った人間、四角形の外側に追いやりたくなる理解不能な存在を登場させることでその境界線をガンガン撹乱させていった。

なにより忘れてはいけないことが我々の見ているスクリーンもその四角形のひとつになっているということ。我々がのぞき込むその四角形の中になんの信頼を見るか、思いやりを見るか問いかけられていた。

劇中でも四角形の中ではなく外で常に物語は起きていた。もちろん今生きている
我々の世界もスクリーンの中ではなく外で自身の物語は動いている。

中だるみしそうな展開でもスウェーデン出身という監督の見事な映像で飽きさせない。
加えてこの監督はおそらく舞台が好きだな。登場人物の役割分担の仕方やストーリーの進み方に伴うシーン展開が舞台っぽい。
最初に財布とスマホを盗られる時の二人の男女がまさにピエロ的に描かれているのがその伏線。

もっと美術に関する勉強や考え方を備えればもっと楽しめる映画だと思った。高山宏の本を何冊か読んでから見ればもっと違ったおもしろさが見つかるかもしれない。
とてもオススメ。
もっと色々細かいことを話したくなるけど、誰か見た人がいたら一緒に話したいですね。
WadeZenta

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