まりぃくりすてぃ

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

3.2
栄倉奈々さんのスタートダッシュな死んだふり連射にけっこー毎回けらけらっ。ワニよかったし、夫・安田顕さんの返しも嬉し。映画にくすぐられてるみたくmyお腹がずっと笑ってた前半。ベートーヴェン「月光」にまでも笑かされ。二人の出会い(バス~寿司屋)らへんがポップさのピークだったかな。
質も落ちてのコスプレ続行に、さすがにうんざり。すると安田さんも「もうやめてよ。飽きたよ……」と私たちみんなを代弁。

自由が丘のパティスリーやら砧のマンションが出てこようともユーモアの種類は庶民的なまま。で、キホン楽しいんだけど、ちょっと長いな感も。テーマにかかわるシリアス部分は説明的な上に貧弱そうで。。
弱いとこはギターの鳴り響きが補った?
それに、同僚役大谷亮平さんがイケてるから。クリーニングのオヤジ客とかゴミ置き場のオバサンとか端役にいたるまで各助演も、それぞれに味濃くて好感だよ。

波瀾を経ての終盤は、お約束のエモ化(子役など使って)。テーマの掘り下げ方はやっぱどこか言葉先行っぽいんだが、作品全体のラブリー度は奈々さんにつられて高めキープ。死んだふりを毎晩した「理由」ではなく「そこに込められた意味」こそがキモだったんですね(みごとなミスリード)! 
ということで、TVドラマっぽくても後味よいのでした。

できれば大谷さん-野々すみ花さん組にも幸せになってほしかったな。。



▼▼ネタバレ注意▼▼

妻ちえはね、“安っぽい言葉が人を傷つける”可能性を知ってる人で、しかも幼時から身近な人をチアアップするイタズラを十八番にしてた人で、しかもJ文学を少しかじってる人だってことが、映画後半で明かされる。夏目漱石が I love you を「月が綺麗ですね」と訳した有名なエピソが出てきた。それは、同じく有名な二葉亭四迷による「死んでもいいわ」を連想させてくれる!
そこらへんから、私は次のように解釈できたのでした。──────ツルゲーネフの『片恋』の中のヒロイン(アーシャ)の情熱的なセリフを四迷が「死んでもいいわ」と訳したことにならい、ちえは毎晩、 I love you の意味で死んだふりをした。その種明かしを理解したからこそ、ラストに今度は夫じゅんが「僕も愛してるよ。君のためなら死んでもいいって思ってるよ」のメッセージとして死んだふりをお返しした。。。。

そういうわけで、この映画の本当の題名は『家に帰ると妻が必ず“愛してるわ”と全身で言ってくれます』だ(ごちそうさま)!