リーアム兄さん

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のリーアム兄さんのレビュー・感想・評価

3.7
デビットエアー監督作ではスーサイドスクワットなのに本当の捨て身の戦闘が描かれず、Queen音楽を使用したtrailerマーケティング依存の物足りない作品であった。

トランプ大統領信者であるネトウヨ達に過去の不適切発言を掘り下げられ、ディズニーのコンプラ対応でマーベル作品の監督を降ろされてしまったジェームズガン。ライバルであるDCにて心機一転リブート版の監督を務める。ガーディアンズオブギャラクシー的ミュージックコントで捨身のスーサイドスクワットを表現する。個性派囚人達がエクスペンダブルな消耗品扱いで次から次へと死んでいく。

キャラクターのユーモアを全開に出すマーベルに対し、内に秘めた暗いインサイドを映し出し抑揚がなく子供受けしないDCの作風から、ちょっと過激なユーモア路線へのピボットが垣間見れる本作。惨殺シーンは必要不可欠であるのでその代償である規制コードでファミリー収入は減ってしまう、まさに捨て身の戦略である。

ネズミ使いをわざわざ主要キャラクターに起用した所にジェームズガンの皮肉が伝わってくる。ロビー活動によるIPの権利延長でミッキーマウスその他キャラクターを1社で独占し、儲け続けるディズニーが世界を覆い尽くす現代。ガーディアンズオブギャラクシーでスター(フィッシュ)になったジェームズガンもそのディズニーの金儲けの世界に飲み込まれ、スーサイドスクワットのように用済みになったら捨てられてしまう。スターフィッシュはジェームズガンを投影したディズニーに対する反逆の象徴なのかもしれない。スターフィッシュが顔に張り付き洗脳された大衆のように、ディズニーの看板を背負っていなくても、ジェームズガンというクリエーターの虜になることを切望する彼の妄想が暴走する。

誰が死んでしまうのか楽しめる要素が含まれており、もしかしたらドル箱キャラハーレクインも‥と思いきや、皆さんご察しの通りやはり商業的にそんなことはしなかった。即席チームの仲間同士のじゃれあい、異種の化学反応、友情の芽生え、なぜか後半で巨大化し建築物を壊したがる日本の特撮怪獣文化など日本カルチャーの系譜やディズニーの成功事例を受け継ぐオタクジェームズガンらしい作品であった。何も考えずに捨て身の戦闘を楽しめる映画オススメ!