リーアム兄さん

プラットフォームのリーアム兄さんのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.3
突如目を覚ますと、二人部屋の殺風景が広がる。CUBE、SAWシリーズのようなシチュエーションスリラーもの。

金持ちがより金持ちになれば、そこから流れ落ちる税金や投資による再分配によって、自ずと下位層も豊かになる。そんな新自由主義のトリクルダウン理論を彷彿とさせる設定だ。しかしご存知の通り、節税対策で格差は広がり、中間層の消滅、二極化する現代。現実逃避のため、同じ階層同士の者たちが無意味にカニバリズムで争いを始める。まさに現代の皮肉的な実態を投影している。

【シチュエーション】
■一人一個この部屋に持ち込むアイテムを選択できる。(専門性を高めるため進学する。)
■上位層階層が残した残飯を食うことができる。欲張らなければ全員が食にありつける。(他者に対する優位性を誇示しない。金持ちになりたい、モテたいなどの欲求を我慢)
■上位層はテーブルを通して下位階層に移動ができる。もちろん飛び降り自殺も可能。(カウンターカルチャー、成長ファーストからの逃避)
■定期的にランダムに階層のリセットがおこなわれる。(ニューディール政策、戦争勃発のような一発逆転の革命イベント)

食べ物がなければ人を食えば良い、映画「生きてこそ」で死んでしまったチームメンバーを食すことを躊躇していたアメフト選手とは対称的におっさんのポークウインナーも食べる輩も現れる。主人公はこの建屋が何回層あるのか探究し始める。下の階層にどんなキチガイが待っているとも知らずに・・

メディアは貧困層(アフリカの子供たち)を取り上げ、上位層を説得しようとする。しかし実際それを受けて世論が動いたと錯覚するが、深ぼって調べるとその行動の背景には上位層の私利私欲が垣間見れる。救世主などいない、結局何も変わらない、どうにもならない輪廻に絶望を感じ、資本主義の終焉を熱望するメッセージが伝わってくる作品であった。事実を知らない純粋無垢な子供に対する希望(グレタトゥンベリなど)、しかしその先は描かれていないが、その先の未来は真っ暗なのかもしれない。人生のマンネリズム解消のイベント化している子育て、暗い現実を生きる自分の時間潰しのために、子供を産む選択の罪の重さを感じさせる作品であった。