リーアム兄さん

最後の決闘裁判のリーアム兄さんのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.5
黒澤明の『羅生門』を参考に、被害者・加害者・被害者の旦那3者の視点でレイプ事件の真相を描き、デュエル(決闘)に向かって物語が進行する。80歳を超えたリドリースコットの原点回帰、長編デビュー作『デュエリスト』の作り直しを試みた作品。カトリック学校の神父に対する性的虐待疑惑を描いた映画『ダウト あるカトリック学校で』のように3者が語っていること全てが疑わしく思えてくる。被害者妻のチャプターが一応真実として描かれているものの、本当に真実であったのか疑わしいモヤモヤ感が残る作品であった。偽証に対する処罰の告知や決闘敗者の処罰シーンなど意思決定の代償が誇張され、3者の発言の重みが余韻として残る作品であった。

アダムドライバーを起用し、女性陣の憧れの存在で美形扱いになっているところが、マッドデイモンやベンアフレックのコンプレックスが脚本に投影されている。よくよくみるとハンサムではないが、ハンサム扱いの俳優たちがデッドプールのライアンレイノルズのような自虐ネタとして盛りこまれている。

セリフでは表現されていないが、ラストの子供と戯れるシーンからこの物語は以下のようなジョディカマーの策略だったのかもしれない。無精子症と思われる旦那、友人の妊娠報告を受けての焦り、レイプされたことにして別の男から精子を受領、妊娠できない理由に勘づいているプライドの高い旦那の葛藤の矛先として、大切な妻がレイプ魔から受けた屈辱を晴らすという大義名分を与え決闘に導く。

ヒースレジャーの『ROCK YOU!』のランスバトルを生々しい決闘に切り替えたリドリースコットの決闘描写、疑惑に満ちた証言の数々に対する真実かどうか分からないもやもや感、主演女優候補間違いなしジョエルカマーの演技を楽しむために是非劇場へ!