つかれぐま

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のつかれぐまのレビュー・感想・評価

5.0
21.9.13@調布#11

笑って泣いて幸せだ☺。
『ザ・ジェームズ・ガン』

大傑作が生まれる条件には2種類あると思う。一つは全てが計算通りに上手くいった場合。もう一つはアクシデンタルな偶然が奇跡的に重なり、それらが噛み合った場合。本作はその後者。新作では20か月振りの5点満点だ💯。

たまたま
・ガンがディズニーを馘になり、
・前作「スーサイド」が黒歴史的失敗。
それらが重なって奇跡的な傑作の誕生。映画の神様って本当にいるのかもね。あの「ガーディアンズ・・」すら希釈されていたと思える、ジェームズガンの信条、センス、生き様が叩き込められた濃厚さ。これは「ガーディアンズ」と「スーパー」を足して2で割っていない映画。

冒頭の10分x2セット!を皮切りに、観客の予想を裏切り続ける手際の良さと、転がるようにジャンルが変わっていくような楽しさに、笑って泣いて幸せな137分だった。

ハーレイクインも最高!
これまでジェームズガンは、いわば「自前」のキャラクターだけを演出してきて、ハーレイのような既に色の着いたキャラクターがどうなるか?若干の不安があったけど無問題。ちゃんとこれまでのイメージを活かしつつも、自分の色も混ぜてたね。彼女のストーリー上の重要度も重すぎず軽すぎず絶妙なバランスだった。

ラスト、まさかアレに泣かされるとはね(笑)。よく考えたら「ガーディアンズ1」の大戦艦vsノヴァ軍の戦い方と同じ構造なんだよね。それを繰り返しているのだから、あれこそが監督の信条そのもの。巨大なモノに対峙した時の反骨心に、もうボロ泣き寸前だったよ。あの場面に流れた美しい劇伴のタイトルは”RATISM"。なんともカワイイ響きの造語だけど、よく考えたら人種差別を意味する"RACISM"と一文字違いじゃないか!それらが紙一重の差でしかないことに対する痛烈な皮肉。冒頭で超気持ち悪かったウィーゼルが、最後ちょっとだけ「キモカワ」くらいに見えたのは気のせいかな。

ビッグバジェットな不謹慎表現という背徳感を楽しみ、監督の生き様が投影された愛すべき連中の活躍に涙し、最後には唸らせてくれる骨太の政治批判。もう完璧なエンタメ傑作じゃないか!

余談:
本作が公開された一か月前、東京の陽性者5000人という最悪の状況だったので鑑賞を自粛した。以来、流れてくるタイムラインに臍を噛む思いで過ごし、先週ワクチン接種が完了、やっと見ることが出来た。公開5週目となり、残念ながらシネコンで一番小さなスクリーンでの鑑賞となってしまった。本来ならIMAXで見るべきなんだろうが、小さなスクリーンでの鑑賞もそれはそれで、ある意味「作品の志」に合っているかも。