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女と男の観覧車のakrutmのレビュー・感想・評価

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
4.0
夫も子供もいる中年女性ケリーは男子大学生との不倫で心が満たされているが、そこに義理の娘キャロライナが現れたことで不倫関係に変化が生じ、結果としてケリーの言動が常軌を逸していくというストーリー。原題のワンダー・ホイールはコニー島にある観覧車(このタイプの観覧車のことをエキセントリック・ホイールと呼ぶことにも注目)のことであり、これが本作の結論を暗示している。そういう意味では、邦題はちょっと原題の意味がぼけてしまっていて残念。

ウディ・アレンの映画は上流階級の人々が登場して、そこで知的でお洒落な会話が交わされるという特徴があるが、本作にはそのような人物は一切出てこない。(本作と同様にイタい中年女性が出てくる映画として『ブルージャスミン』があるが、主人公のジャスミンは元々上流階級であり、いつまでたってもその頃の自分から抜け出せないのが痛々しいという点で本作とは大きく異なっている。)そのような理由とともに、ストーリーがソープオペラのような内容とも言えるので、概して批評家たちの評価は良くない。しかし個人的には、傑作とは言わないまでも、人生なんて所詮こんなものだという達観がシニカルに表現されていて、良質の映画であると思う。特に、ケイト・ウィンスレットの後半の演技は素晴らしい。いつも思うが、ウディ・アレンはキャスティングが上手である。ただし、他の登場人物の演技がイマイチ印象に残らない点はマイナス。

最後に一言。現在の状況からすると、おそらくウディ・アレンの(公開される)映画は本作が最後になる公算が大きいことは、非常に残念でならない。#MeTooに代表される性的被害の体験告白の流れは、そのような犯罪撲滅や人権保護の観点からとても重要かつ効果的な運動であることは十分に理解しているが、事実かどうかに関わらず訴えたもの勝ちのような部分もあり、ウディ・アレンに降り掛かった今回の性的虐待騒動はそのような見方が出来る。この問題はすでに10年以上前に立件するだけの十分な証拠がないと判断されているし、当時のパートナーだったミア・ファローも相当に怪しい言動をしていたので、個人的にはウディ・アレンは無実だと思っている。そこら辺の事情をよく知らずに、ウディ・アレンの作品に出演したことを恥じる声明を多くの著名な俳優が出していることも、とても残念。この事件に関する詳細については、『ウディ』(デイヴィッド・エヴァニアー著、大森さわこ訳)が詳しいので、興味ある人は読んでみてください。少なくとも現状のようにウディが一方的に非難されるのはアンフェアであることがわかると思います。
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