カツマ

女と男の観覧車のカツマのレビュー・感想・評価

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
3.9
頂上から見えた景色はゆっくりと運命のように堕ちていく。その観覧車は出口という名の入口へと恋人たちの幻想を吐き出して、また次の幻想へと向かう。激情の真紅、冷酷な青藍、混ざり合うと燃え上がるのは嫉妬の炎。その火はメラメラと燃え上がり、全てを焼き尽くしては、平和な日常を灰色へと染めていく。

ウディ・アレンが描く、1950年代を舞台にした男女の愛憎劇。愛よりも憎の方が濃く思えてしまうのは、愛と憎は非して似なるものだから、なのだろうか。赤と青を効果的に用いて、燃え盛る嫉妬心と冷徹な怒りを堕ちてゆく夕日のように表現した。夢のようなメリーゴーランドがゆっくりと終わりを迎える、その刹那の物語。

〜あらすじ〜

舞台は1950年代のコニーアイランド。遊園地内のバーで働いているジニーは、薄給ではあるが、息子のリッチー、再婚相手の夫ハンプティと共に平凡な暮らしの中にいた。心配の種はリッチーの火遊びくらいのもので、彼女の日常は淡々とだが流れていった。
そこへ、親子の縁を切っていたはずのハンプティの娘キャロライナが帰ってくる。彼女はギャングでもある夫から逃亡し、ついには勘当された父親のもとへと辿り着いたのだ。
それ以来、ジニーの平坦な日常は徐々にだが確実に不穏な影を帯びていく。浜辺で出会ったライフガードの男性ミッキーとの不倫に走り、平凡な日常から脱出しようとするのだが・・。

〜見どころと感想〜

ケイト・ウィンスレットが単独で完全無双するほどの乱舞。彼女の熱演のせいもあり、ジニーの人物像は圧倒的に感情的で人間的に描かれており、まるで監督ウディ自身の実体験の中の明確なモデルが連想できそうなほどに、リアルなキャラクターとして君臨している。

ストーリーはほぼ予想の範疇だが、出口を感じさせない終わり方はウディらしい皮肉にまみれており、恋愛の愛憎劇を描いてきた彼ならではの経験則もついに泥沼を通り越して、胸糞な次元へと到達している。

だが、この映画は面白かった。人間の本質の中の一路線へと豪快に切り込んでおり、よくある昼ドラ的な恋憎を極端な形で描いているという点で、とても振り切れた作品でした。

〜あとがき〜

ケイト演じるジニーのキャラが超強烈なのに、この手の人に会ったことがある気がするのが何とも怖い。
恋愛は愛憎劇かもしれないけれど、憎の部分を塗りつぶせるような恋愛が普通であってほしいと思う。それは赤と青以外の色を探して、恋愛の観覧車を回し続けるということなのでしょう。
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