ウシュアイア

ミスター・ノーバディのウシュアイアのネタバレレビュー・内容・結末

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

[あらすじ]
2092年、医学の進歩により人類は不老不死を手に入れた時代、事故で意識を失っていた一人の男・ニモが目を覚ます。ニモは不老不死を手に入れていない最後の人間、つまり最後に死ぬことになる人間であった。
臨終を目前に、医師や記者はニモの過去を探ろうと問いかけるうち、ニモは自分の記憶をたどりながら、自分が意識を失うまでの半生を語りだした。

1975年に生まれたニモは、9歳の時に両親の離婚を経験し、母親についていった結果、母親の恋人の連れ子として再会した幼馴染アンナとの情熱的な恋をする人生、父親についていった結果、半身不随となった父の介護に追われながらも、エリースに想いを伝えエリースと結婚する人生、またエリースに想いを伝えられずジーンと結婚する人生・・・と、いくつもの人生が交錯した身の上話を語りだした・・・。


ものすごく、奥の深い哲学的なSF作品であった。
歳をとってくると、人生の岐路で別の選択していたら、と考えることは少なからずあるだろう。人生は一度きりで、岐路が訪れるたびに人は選択をして、今の人生があるわけだ。その一方で、一枚のコインを手にした少年ニモが、何を買うか決めないことで、可能性が残る、と云う。

この映画を見て、人生の選択について、深く考えさせられた。

物理学の世界にある「シュレディンガーの猫」を思い出した。
外から中の様子を見ることができない箱の中に、いつ毒ガスが発生するか分からない装置を仕込んだとき、猫は生きているか死んでいるか、という問題である。もちろんふたを開けるまでは猫が生きているか死んでいるかはわからない。ふたを開けない限り、どちらであるか確定しない。したがって、ふたを開けていない状態では、生きている状態と死んでいる状態が共存していると解釈する。ふたを開けた結果、死んでいたとしても、猫が生きているというパラレルワールドが存在する、という話もある。
神のような存在がなければ、宇宙は無数に存在するのか?
そして人の選択のたびに宇宙は分かれていくのだろうか?
そんな疑問が湧いてくる。

ストーリーに加え、音楽、映像、演技も素晴らしい。

人生のベスト10映画の一つ。
ウシュアイア

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