このレビューはネタバレを含みます
ジャズ・ドラマーが主題の『セッション』を観てからドラム音が耳から離れず、ドラム繋がりで、10年ぶりに再見。
改めて見てみると、見所が多い映画だ。セリフの情報量が全然違うので、英語が苦手なら、字幕より吹替の方が断然オススメ。
映画としては、登場人物は黒人メイン、黒人カルチャーにスポットが当てられているのが特徴だと思う、ひとり孤立している白人メンバーとの友情など、王道も抑えられている。
1対1のドラムソロでの喧嘩も熱いが、軍楽隊をルーツとした側面ももちろん踏まえられており、ドラムライン=戦線なのだと思った。圧巻の迫力。
練習風景もまるで軍隊式訓練のようだが、そのなかにひとり女兵士のような紅一点が混じっているあたり面白い。
音楽を愛し教育者であることに誇りをもつ監督と、OBの目を気にして勝てるプログラムを要求する学長、派手さと華やかさがウリのライバル校の監督など、大人同士の対立構造も見応えがある。
オールドスタイルの伝統にこだわる監督と、現代風のパフォーマンスに傾倒する学生たちと、それに熱狂する観衆、新旧の対立、歩み寄り、和解、融合という展開も王道だがハズレなし。
大人の事情も垣間見せつつ、主人公が目上ともぶつかれば、同年代ともぶつかりながら、人としてチームとして成長していくところは、大学生ならではというか、同年代との結びつきがメインに描かれがちな高校生とは違うところだと思った。
その他、先輩との決闘を経ての友情だとか、ダンサーになることが夢だが親離れできていない女の子との恋だとか、出る杭は打たれる天才だとか、貧困だとか、父との確執だとか、チームワークについてだとか、売られた喧嘩を買わない忍耐と秘めた闘志だとか、これでもかと詰め込まれているのに、スッキリまとまっているのはすごい。
マーチングバンドのパフォーマンスは音だけでなく、視覚的な美しさ、迫力もあり、映画的醍醐味がしっかり味わえる作品。